『ピンクワンピース・コンプレックス』/第16回のお題「憧れ」

 始まりは淡い憧憬だったように思う。

でも、いつしか欲しくて欲しくてたまらなくなってしまった。


 赤いタータンチェックのスカート。晴れた日の青空のように綺麗な水色のフリルブラウス。発表会で着た光沢のあるピンクのワンピース。

「いいな」と羨ましくてしかたなかった。

だけど、お下がりとして手に入った途端、そのどれもが色褪せて見えた。

 ピアノは『こどものバイエル』上巻で嫌になってやめてしまったから、お姫様のドレスみたいなワンピースを着て行く場所なんてなかったし。


 姉を傷つけてまで手に入れた男は、私になびいた時点で魅力を失っていた。

 憧れていたのはその男でもお洋服の数々でもなくて、お姉ちゃん自身だったとやっと気づいた。

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