『観梅で乾杯』/第15回のお題「酔う」

 春と風に誘われて、お花見に出かけた。

けれど、まだ桜は咲いていない。

いつから花見といえば桜になったのか。

花見の起源は梅らしいのに。

 かくいう俺も、小梅という名の恋人ができるまで梅に見向きもしなかった。

小梅が愛おしくなるほど梅自体もかわいらしく見えてきたんだ。


 公園のベンチで缶チューハイを片手に観梅してる俺を遠くから警戒するような目で見る親子連れ。

もしも桜の時期で、更に一人きりじゃなければ、こんな視線を浴びることもないのだろう。

 桜満開時の花見客なんて純粋に酒に酔っている人は割と多くない。

みんな雰囲気に酔っているだけだ。

 

 でも、弱ったな。俺も今、全く酔えない。

小梅を偲んで飲む酒は……たとえストロングでも。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る