『ステルス略奪愛』/第11回のお題「奪う」

 あの女は、世界一幸せそうな顔で笑っている。

無垢の象徴であるドレスが、本当は泥まみれだということも知らないで。

この場で赤く染まらないだけでも感謝してほしい。


 奪われたものは、奪い返せばいい。

正妻の名に胡坐をかいて、家に閉じこもっていればいい。

話のつまらない家政婦のおばさん化していけば、こっちのものだわ。


 三年かけて彼から「妻とは別れる」という言質を取って、宣戦布告した。

しばらく電話が通じなかったが、ある日あの女から連絡が入った。


「入院していたもので、連絡が遅くなりました」

「え?」

「薬を多く飲み過ぎてしまいまして……。あ、いや、貴女には感謝しているんです。結果として、モラハラ夫から解放されましたから」




※『ステルス』/お題「親切な暗殺」で創作した410字のショートショートの

 side B ストーリーです。↓ぜひ、合わせてご一読ください。

https://kakuyomu.jp/works/16817330658548760551/episodes/16817330666278079827

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