『当選』/第9回のお題「育つ/育てる」

 あの金があれば生活も楽だったろうに……と思うことも、なくはなかった。

妻は家事と育児に一切手を抜かずに、パートまで頑張ってくれた。

俺自身も“イクメン”なんて言葉のない時代にしちゃ、子育てによく参加した方だと思う。

そのくらい自己評価が高くても、許してくれるだろうよ。

ようやく天国で再会できる。


「貧乏でも、妻と出逢えたことが、宝くじに当たったようなものだ」

 奴の目の前で言ってやった。俺の物だったはずの宝くじ当選金を猫糞したのは、薄々気づいていた。


 死に際に白状して自分だけスッキリしようもんなら、許してやらなかったけど。

奴の惚れた女を奪ったのは、俺の方だもんな。

唯一の友達として、天国で待ち構えていてやるか。

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