『飼育と教育』/第9回のお題「育つ/育てる」

「金魚すくいあるぞ。やるか?」

 毎年なるべく視界に入らないよう凌いできた努力を無駄にする、のんきな夫の声。

土日出勤の多い夫は、子ども達以上に久しぶりの夏祭りに浮かれている。

「飼えないからやめよう」

 声をかけた時には既にポイを受け取っていた。

昔取った杵柄を披露して、ヒーロー気取りの夫を尻目に頭を抱えた。


「命の教育にもなるから」

 翌日夫は、はりきって水槽・ポンプ・餌などの飼育セットを購入してきた。

炎天下で弱った金魚は、案の定すぐに元気を失くした。


 一匹死んでしまった時、泣きながら庭にお墓を作っていたが……

「また死んでるー」

 三匹目ともなると、外に出ることさえ渋る始末。

命の教育とはいかに……とまた頭を抱えた。

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