第2話 領地に行くぞ!

 「よし、今日からクリスピア家の領地に向かうとしよう。カインさんから領地への地図はもらったしこれを頼りに行くことになるよ。」

「いつの間にカイン兄様と会ってたの…」

「どうせ【テレポート】でしょ。」

「僕、連絡取れるって説明してなかったっけ…。」

「してたわ。ユーリが聞いてないだけよ。」

「……覚えてないかな。私も【テレポート】使いた~い!」

「固有能力の【オリジナル】使えばいいじゃない。」

その通り…私の固有能力【オリジナル】はその魔法をそのまま真似することが出来る、でも何かが退化するのだ。完全に真似をすることが出来ないし上手く使いこなせていないのが現状だ。

「ま、まぁそんな事は置いといて領地に行くぞ!」

「逸らしたわね。」

「逸らしたね。」

「なんの事かなぁぁ!?」

羞恥心で話を逸らすと二人からの視線が刺さる。

 地図を頼りに森を進んで行くと周りの草から音がした。

「音がする…。」

「流石、獣人ね。耳がいいわ。」

「一先様子を見よう。動かないほうが良いかもね」

横の低木から突然五体の狼が襲ってきた。

「あれは…シャドー!?」

シャドー、それは狼族の一種で森の中を群れで行動する。人を襲うため冒険者教会でクエストとして駆除依頼が多発している。

「五体なら私一人で対処出来る!」

「ちょ、シルビア!?」

シルビアは片手剣を手に握り地面を勢いよく蹴って小声で魔法を発動させた。

「【バースト!】」

身体強化の魔法【バースト】を使い足を速くしてシルビアはシャドーに突っ込んで行った。

「【フレイムソード!】」

片手剣に炎が纏わり付きその剣をシャドーに向けて回転斬りをかますと、シャドーはゆっくり倒れた。

「流石だね。瞬間に付属魔法をするなんて。」

「これでも、副団長なんだから。」

「私の出番が…。」

「ユーリはカノンちゃんを助けるまで体力を残しとかなきゃ。」

「カノンちゃんはユーリに助けてもらいたいしね」

「ありがとう。」

二人の配慮に感謝しながらシャドーの死体を解体する。

 「領地にも冒険者教会があるなら、そこで買い取ってもらってお金に換金してもらおう。」

シルビアは手際良くシャドーを解体して、お肉と皮に別けながらそう言った。

「確か、領地にも冒険者教会あったと思うけど…どうだったかな。」

「そっか、ユーリはあまり領地には帰らないんだよね?」

「え?どうして?」

「領地にはお祖母様とお祖父様が居てさ…二人共私の事を嫌ってるらしくて、魔法や剣術を習ったときから女の子らしくないって、話すことも出来なくなっちゃってさ。」

「勝手ね、女の子が守るすべ、攻撃をするすべを習ってもいいと思うけど。」

「昔は、女性は家庭のことを男性は外のことをするっていう文化だったからかもね。」

「よくある話ね、未だに昔の文化を引っ張る人達」

シルビアは呆れたように話すとルーナは苦笑いを返した。私は祖母と祖父を思い出して少し胸が苦しくなった。ルーナが私の状態に気付いたのかそばに来て少し休もうかと言ってくれたが、断り領地に行く足を早めた。


 森をどれだけ進んでも領地が見えてこないため、

ルーナが風の精霊を呼んで上から確認してもらうことにした。

「【我の呼びに答え、そして姿を表わせ!風の精霊ブリュド!】」

ルーナの発言が終わると光り出し目をゆっくり開けるとそこには白い羽にエメラルドグリーン色の髪の毛で短髪な小さい少年がいた。

『僕を呼び出してどうしたの?主。』

「急に呼び出してごめんね。上から森を見てもらいたくてさ。」

『ふ~ん、じゃあそこにいる綺麗な魔力を持ってる獣人さんを紹介してくれたらいいよ。』

「えっと…それは。」

「あら、これはこれは、危機的状況ね。ルーナ」

「なんで?」

「ユーリはまだ知らなくて良いわよ。」

「ちょぉい!そこ!シルビア!少し助けてくれてもさぁ。」

ルーナは焦りながらシルビアに助けを求めていた、何でだろ。

『なるほど…主はあのじょむぐっ!』

「ちょっと黙ってようか?」

ルーナの顔が暗くなり怖いニッコリ笑顔を精霊に見せると、精霊は怯えていた。


 『んで、上から森を見ればいいんですね?』

「あぁ。宜しく頼むよ。」

ルーナを落ち着かせてから風の精霊ブリュドに事情を説明すると良いよと言ってくれた。ブリュドはルーナの指示に従いながら上から森を見る。

数分後ブリュドは上から降りてきてルーナの肩に乗る。

 「どうだった?」

『特に何もなかったよ。それと少し進んだ所に大きい塀が見えたかなそれ以外は何も。』

「そこだ!そこが領地だ!」

「あともう少しかぁ。」

シルビアはため息をつきながらのびーっと腕をあげる。

『ん?そこに行きたいの?』

「そうなんだよ。」

『じゃあ、僕が連れてってあげるよ。』

「え?」

『魔力さえくれればそこまでひとっ飛びだよ。』

「魔力か…分かった。」

ルーナがブリュドの手を握り魔力を流し込むとブリュドの羽が大きくなる。

『さぁ、手を貸して!』

ブリュドの言葉に私達はブリュドの手を握ると足が浮いてあっという間に森の上にいた。

「おぉ〜!」

『ふふん!僕は風の精霊だからね!空のことなら何でも任せて!』

得意気な顔をしながら私達を領地の前で降ろす。

「ありがとう、ブリュド。」

『じゃあ、僕は疲れたから帰るね。』

そう言ってブリュドは姿を消した。

「ここが、クリスピア家の領地か…。」

「始めて来たけど、滅茶苦茶広いわね。」

「久しぶりだなぁ。」

 私達はそのまま門の前まで行き、クリスピア家の家紋を見せると門番はすんなりと通してくれた。

「久しぶりすぎて顔覚えてもらってないなこれ。」

「普通、自分が担当してる領地の人位顔覚えるでしょ。」


 領地の中に入るとそこは賑やかな街だった。

私達は先に冒険者教会に寄って、換金して宿を取ってから奴隷商売所を探すことにした。


 「ようこそ!冒険者教会へ!」

「すみません。換金したいのですが良いでしょうか?」

「はい!こちらへ。」

シルビアは解体したシャドーを机の上に置く。

「シャドーが五体ですね。解体も素晴らしいです。お金はこちらになります。」

「ありがとう。」

 換金を済ませ冒険者教会から出ようとした途端、周りからの視線が変わる。

「よぉ、嬢ちゃん達。気高い嬢ちゃんがこんなところに何かようか?」

「いえ、ただ換金しにきただけですけど。」

「ほぉ~ん。あんたらは冒険者なのかぁ?」

「いいえ。」

「だからかぁ。弱そうだもんなぁ。」

トゲトゲの防具を来たムキムキの人が当たりに来るとシルビアは冷静に言葉を返す。そのまま、横を通り過ぎようとするとムキムキの男の後ろから少し筋肉がついた細めの人が出て来る。

「特にそこの後ろにいる紫のマントを着ている嬢ちゃん。」

「僕のことかい?」

大丈夫かな、この人。ルーナは女の子の見た目をしてるけど男性だ。見た目では分からないけど筋肉もついてるため下手に喧嘩を売らないほうがいいぞ。

そして、ルーナが相手の手を握ると相手は涙を流した。

「痛いっ!痛いっ!」

「こんなので痛がってるなら僕たちより弱いんじゃないのか?」

ルーナが余裕の笑みを相手に向けると相手の男性は泣きながらムキムキの男性の後ろに戻っていった。

弱すぎでは?えっ。一握りで帰ってった。

一方シルビアの方ではムキムキの男性の相手をしており、ムキムキの男性もシルビアの攻撃には耐えられなかったのか、ヒョロガリと一緒に泣きながら冒険者教会を出ていった。嵐のような人達だったな。

「嬢ちゃん達凄いなぁ!」

「あの赤竜達を倒すなんて。」

「赤竜?」

「あいつらのギルド名だよ。確か龍を倒してモテるために冒険者になったらしいぞ。」

「何その意味わかんない理由。ルーナはわかる?」

「何で、嬢ちゃんに聞くんだ?」

「だって、ルーナは男だし…。」

「えぇ!?男なのか?」

「そうだよ。僕は男性だよ。決して女装したくてしてるわけじゃないよ。」

「そうなのか…ってお前、紫の証じゃねぇか!

そこの獣人の嬢ちゃんも黄の証!それに水色の髪の嬢ちゃんも赤の証だし!お前ら凄いなぁ!」

「あはは…ありがとうございます。」


 結局長く話しすぎてしまった。あの後周りの冒険者から色々話をされて夕方になってしまった。なぜだほんとになんで…。

「凄い迫られたわね…。」

「びっくりだよ。ほんとに。」

追いかけ回されてボロボロの二人を見て、早めに宿を見つけようと思い急ぎ目で宿を見つけると二人はダッシュで宿に駆け込み支払いを済ませた。早い、早いよ。


 宿屋カフェロンの102号室にて。

「はぁぁぁ…疲れたぁ。」

「シルビア…布団がクシャクシャになるよ?」

「いいのよ、直せるし。」

私とシルビアは同じ部屋でルーナは別部屋で休むことにした。

「あっそうだ。ユーリに聞きたいことがあるんだけど…。」

「何?」

「ユーリって、ルーナの事どう思ってる?」

「ふぁい!?」

突然何を申すかなこの人!あっそうだ、じゃないよ!?切り出し方独特だよ!…一旦落ち着こう。

ルーナの事…か。頼もしいと思ってるけど…うーん?

「頼もしいとは思ってるよ、それに優しいし。」

「男として見ることは出来る?」

「どうだろう。まだ分かんないや。」

「そっかぁ…まぁそりゃそうだよね。幼い頃から一緒だったし、今更男として見るのもか…。」

「にしてもどうして突然そんなことを聞くの?」

「いやっ、少し気になっただけだよ。ほらルーナって女性ウケいいでしょ?だからどう思ってるかなぁって。」

「あーなるほど?確かにルーナはかっこいいけど…そこまで執着するほどじゃ無い気がするなぁ。あっでも!弱みは握ってみたいかもルーナには弱みがない気がするから。」

「あーね。うん。」

(ルーナの弱点はユーリな気がするけど…まぁ黙っておいた方が面白いかな。でも、かっこいいとは思ってるのかぁ。これは良い情報だ後でルーナに報告しようかな。)

「恋話はここまでにしといてそろそろ寝ようか。いい夢見てね、ユーリ。」

「ありがとう。そっちこそいい夢見てね。」

私とシルビアは布団に入りおやすみと一言、言って眠りについた。



 「お母様!待ってください!」

「何!シルビア…いい加減私についてくるのはやめて頂戴!」

「で、でも!これを見てほしくて!これです!」

私は小さな水色の花を両手に持ちながら母に見せる。

「汚い色ねぇ、あんたみたいだわ。」

「き、綺麗ではないですか…お外に沢山咲いて…いて、素敵だから…。」

「知らないよ。あんたの好みなんか知ったこっちゃない。それに花摘みなんかしずに伯爵令嬢としての作法を学んでなさい!」

「……は、い。」

私は幼い頃から母に嫌われていた。何をしても認めて貰えなかった。可愛くて女の子らしい妹、フレンばかり褒めて私は何も貰えなかった。父は仕事が忙しく子供である私に構う時間など無かった。

親の愛情は貰うことは出来ないと知っていた、別にそれで良かった慣れていると…何時ものことだと思っていたのにある日自室に戻るとまぶたが熱くなり水が出てきた。

「なん…で?どう、して。」

それが涙だと分かった同時に疑問が湧いてくる。慣れているはずなのに、愛情が貰えないなど何時もの事なのに始めて悲しいと感じた。どれだけ努力をしても頑張っても誰も認めてはくれなかった。魔法の才能もなく、ただ剣を握って常に木にぶつかるだけ令嬢としての可愛さも清らかな心も何も無かった。使用人にもゴミを見るような目で見られご飯はパンだけ。何も出来ないから仕方無いと言い聞かせてきた、そう思わないと生きれなかったから…。

「何でよ…どうして今更涙が出るの?何年も…何年も出なかったのに!今更己を可哀想だと認識するの!?」

自分に苛立った、今更泣いて何がある。泣いたところで何も無い、希望も夢も捨てたのだ。意味のない涙を流して自分の水分を減らしてく、まるで生きていくのを諦めたようだった。悔しくて苦しかった。

私にとって、涙を流すのは自分を可哀想だと思っていからだと思っていただから、私が涙を流したのは自分が可哀想だと自覚しようとしているからだなのだと。

「可哀想…心ではそう思ってるの?それとも、本の言う通り辛いの?辛いと涙が出るというのは本当なの?」

ある本では、一人の少女が泣いていてそこに一人の少年が現れるその少年は「辛いの?」と一言言って、少女の側に寄り添った。そんな本を読んでから涙は辛いから出るのではと思い始めた。


「お母様!みてください!綺麗なお花達です!」

「そうね、とても綺麗だわ。」

「ふふっ!」

私は自分の部屋(屋根裏部屋)についてる窓から外を見ると陽気な話をしている母とフレンがいた。私の固有能力【強化】で耳を良くして二人の会話を聞いていた。悪いとは思っている、でも羨ましかった。あれが親子なんだと思い知らされた。

「お母様はお姉様のことどう思ってるんですか?」

「そ、それはかわいい子だと、思ってるわよ?勿論、あなたよりは下だけど…。」

あぁ嘘だ。フレンの前では平気で嘘をつくのね。大人はそういうものだ。都合が悪いと嘘をつく。フレンには綺麗事を言っていたいのだろう。

「まぁ、お姉様は私より可愛いですよ!それにとても強いです!私もいつかお姉様みたいに優しくて強い令嬢になりたいです!」

「あ、あら、そうなのね…えぇ、きっとフレンならなれるわ。」

フレンは優しかった。居場所の無い私を受け入れて私の事を姉として見てくれた、家族として見てくれたのだ。でも、彼女もまだ私の努力は知らない…彼女は綺麗なことだけを知っている。親が何を企んでるのかも、大人がどれだけ汚いのかも何も知らない。知らずに笑顔を振りまいて虜にしていくんだ。

彼女に悪気ないのは知っていたそれが彼女のフレンの素だから仕方のないことだと。


ある日私は舞踏会に出ることを命じられた。始めて着飾ったのだ。

フレンと共に馬車に乗り数分経つとそこには大きな城があった。

「ここが…王城…。」

見惚れていると、母の声が聞こえ馬車からすぐに降りると、フレンはお姫様のように騎士に手を添えながら馬車から降りてくる。

「とても綺麗なお嬢様ね。」

「えぇ、ほんとに!可愛らしいわ。」

周りからの反応は全てフレンに集まっていた。それを誇らしげにする母はフレンの側に行き周りの視線を買いながら王城の中に入っていった。私もその後に続きながら歩いていくと大きな広場、メインホールに着いた。そこには色んな御子息や御令嬢がおり。特に目立っていたのは白色の髪の毛で獣人の令嬢だった。周りにいるご家族も他の貴族達の視線を奪っていた。

「フレン…あそこにいる人達はクリスピア公爵よご挨拶して、必ず輪にはいるのいいわね?」

「…?はい。」

本気で言っているのか?まだ十二歳の娘を公爵に取り入れようとしてる。


「初めまして、クリスピア公爵様、タシメン伯爵家のノファエルと娘のフレンです。」

「初めまして、公爵様。タシメンが娘のフレンです。」

「初めまして。クリスピア家のノクタールと申します。さて、そちらの娘さんは?」

「!?あっ、えぇとですね。我が娘のシルビアです。」

「シルビアと申します。」

「シルビアって言うのね。宜しくね。私の名前はユーリ!仲良くしてね。」

失礼かもしれないが、ユーリからは公爵令嬢感がしなかった。それに、普通はフレンの方に話しかけるのでは?何故私なのだろうか。

「お父様。私、シルビアと外に言ってもいいですか?」

「シルビア殿がいいと言うなら許可しよう。」

「私は別に…大丈夫です。」

「じゃあ行こ!」

ユーリは私の手を握って走り出し裏庭に出た。

「ここ…来てもいいの?」

「うん!ここはね私のお気に入りのスポットなの。メインホールは息苦しくてさ。」

「…あなたでも息苦しいと感じるの?」

「勿論。だって人だもん。それに私に話しかけてくるのは大体の人が公爵の人間だからだと思って。権力とかそういうのに群がってくる大人の人は嫌い。目の前のことしか見てなくて馬鹿みたい。」

公爵令嬢からそんな言葉を聞くことが出来るとは思って居なかった。彼女は芝生に転がり目を閉じる。

「大人ってさぁ。汚いと思わない?」

「どうして、ですか?」

「どうしてってそりゃあ。大人の人は権力や富名、声それしか考えてないじゃん。それに、政略結婚だーとか愛のある結婚すら出来ないなんて。」

「でも、それが今のルールでしょう?上の命令には逆らえないわ。」

「ルール?誰がそんなこと決めたのよ。人間は自由であるべきだよ。上の命令とかその人の勝手でしょ?」

彼女の言ってることは私の思ってることと同じだった。公爵令嬢の人にそんなことを言うのは良くないかもと思ったが、彼女は私と同じで平民と同じ思考してるのだろうと。

「シルビアもそう思う?」

「私は……う、ん。そう思うかな。」

「そっかぁ!じゃあ同志だね!」

「同志?」

「うん!だって同じ考え何でしょ?いつかさ、大人になったらこの世界を変えてみたいの!ついてきてくれる?」

世界を変えることは出来ないと思ったでも、この人となら可能性が沢山あると私にとって母と父を見返すチャンスなのだと、そう思ったから私はユーリが差し伸べてくれた手を強く握った。

「私達はこれから友達!」

「友達?伯爵の私があなたと?」

「地位なんて関係無いでしょ。お父様に仲良くなりたいと思ったのなら行動に移せとそして表せって言われたから!」

「公爵も少し変な人なのね。」

「お父様は他の貴族と違って平民にも気を使ってるからね。他の貴族からは悪く言われてるよ。」

その発言をした彼女は悲しそうな顔をしながら笑った。無理矢理笑ってるんだと直ぐに分かった。何故なら自分も無理してるから。

「そうだ!お近づきの印にシルビアの事聞きたい!それと敬語はやめてね。友達なんだもん!」

「え、えと。面白い話なんて無いよ?」

「何でも良いよ。困るなら悩み事とかそういうのでいいの。」

「じゃじゃあ。悩みを聞いてほしい。」

「いいよ!」

ユーリは立って私の目の前に座った。話を聞きやすいようにするためだろう。

私の悩みはきっと彼女には分からないかもしれないそれでも、誰かに話したかった。共感してくれるかもと少しの希望を持った。

「私はどれだけ努力しても、誰も認めてもらえないの。令嬢作法を頑張ってるのに褒めてはくれない。何をしてもフレンの方が凄いって。比べられるの。」

「フレンって妹の?」

「うん…。」

「…こういうのも何だけど私もなんだ。魔法を頑張っても流石公爵令嬢、当たり前に出来ますねって剣術を頑張ってもカイン兄様には及ばないって、逆に政治に突っ込んでもロイよりは劣る。褒められる所なんか無かった。カイン兄様は剣術を見てくれて凄いと言ってくれるけど素直に受け取れなかったの。だって、カイン兄様の方が凄いから。」

私と同じ気持ちの人がいるんだという嬉しさと同時に彼女の悲しそうで涙が今にも溢れそうな目を見て胸が苦しくなった。

(そっか、ユーリも私と同じなんだ。同じ気持ちで同じ体験をしてるんだ。公爵だからって…身勝手だ。)

「私達、同じだね。」

「そう、だね。」

私の発言に涙をぐっとこらえながらユーリは笑顔で返した。その時に彼女は私よりも苦労をしてるんだろうと苦しいのだろうと思った。

私も彼女と同じだと思えると、同じ気持ちなんだと思ったら涙が出てきて、ユーリはそれを見てゆっくり私を抱きしめてくれた………。



 「はっぁぁ!」

見が覚めるとそこは天井だった。懐かしい夢を見た。私とユーリの出会い、そして始めての友達、気持ちを分かってくれる同志。

「どうしたの?シルビア。」

「あっ、ごめん。起こしちゃったかな。」

「大丈夫だよ。起きようと思ってたところだし。 って、シルビア大丈夫!?泣いてるよ!?」

「え…あっ、ホントだ。」

「怖い夢でも見たの!?」

あたふたするユーリを見てホッとした。昔から変わらないと。

「懐かしい夢を見てさ。始めて友達ができた日のことを思い出して。」

「そうなんだね。奇遇だね!私も友達が出来た日のこと思い出したの。」

「ふふっ。似た者同士ね私達。」

「だねっ!」

お互いに笑顔を見せながら笑い合う。


 コンコン

『起きてるー?君達いつまでそこで喋ってるのさ。奴隷商売所、探しに行くよー?』

扉の外からルーナの声が聞こえた。シルビアと私はは着替えてルーナの元に行った。


「さーて、どうすっかなぁ。」

「情報も無いしどう探そうか。」

行き詰まりの私達は頭を抱えていた。

「冒険者教会なら、何か分からないかな?」

「「それだ!」」

数分後、頭を抱えて出たのを言葉にすると、二人共納得をした。仲良いね君達。


「すみませーん。情報が欲しくて。」

「はい!情報なら、こちらの方へ。」

「実は…。」

誘導された方へ行き、事情を説明して情報を買い取った。


「んで、僕達はここに行くんだよね?」

「そうだね。ここの奴隷商売所が一番怪しいかな。」

情報によるとクリスピア領地内にある奴隷商売所で新しく少女が仕入れられたらしい。その少女は赤い目で金髪の見た目をしているらしい。カノンの見た目そのまんまだ。

「よっし。カノンちゃんを助けに行くとしますか!」

「「おおー!」」



数十分歩くと、そこは平らな土地で何もなかった。

ルーナが何処かに隠し扉があるはずと言って魔法で探してくれた。

「【サーチ】……あった!ここだ。」

「おぉ!でも、どうやって開けるの?」

「魔法で良いでしょ。どうせ壊すんだし。」

「でも、中に入ってどうするの?何も計画立ててないよね?」

「「あっ。」」

 私達は一旦近くの宿で休み、そこで作戦を立てることにした。

「一先、カノンちゃんを助けるには中にいる商売人を捕らえなきゃいけない。」

「殺しちゃ駄目なの?」

「えっ、捕らえるの?」

「逆に何で殺そうと思うの?僕はそれが気になるよ?」

私とシルビアの発言にルーナは恐ろしそうな顔をした。恐ろしいというよりびっくりよりな。

「とにかく!カノンちゃんが何処にいるか分からない以上、下手に爆裂魔法は撃てないし、範囲攻撃もできない。」

「一体ずつ減らすしかないのか。」

「面倒くさいな。」

慎重に行かなくては行けないのは等にわかってるが早く助けたいと言うのが出てきて面倒くさいと感じた。 

そして数時間後、作戦を練りに練りまくったため

見つけた奴隷商売所に行くことにした。


「行くよ!」

「よし!」

「うん!」

ルーナが扉を壊すために魔法を発動させる。

「【邪魔なものを消し去れ!闇魔法!デスト!】」

ルーナが魔法を発動させた瞬間目の前の地面が静かに消し去ったそれと同時に見えたのは赤い地面、絨毯だ。

「よし、皆。準備はいいね?いざ!カノン救出作戦!」

私の掛け声と共に二人は真っ先に中に飛び降りる。

ここからが、本番だ私のステージが始まる!

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