第60話 親友の悲しんでる姿を見たくないのなんて、海外では普通だから

 …ソフィアが、俺のことを好き?

 それに、手錠?


「ソフィア…こんなことして、どうするつもりだ?」


「ひとまず望宮といっぱいお話でもしたいな〜」


「お話って…だから、さっきも言ったが、こんなことしなくても、俺はソフィアと会話ぐらいする」


「それもさっき言ったけど、アリスが居る限り私は普段望宮と会話することもできないんだって、普段自分がどれだけアリスによって外界から遮断されてるかわかってないわけ?」


「遮断って…手錠をかけられている今の方が、俺にとってはよっぽど外界から遮断されているように思う」


「…はぁ、本当何もわかってない」


 ソフィアは呆れた様子を見せると、ドアノブに手錠をかけられ床に座っている俺に合わせてしゃがみ込み、俺と顔を向き合わせると言った。


「いい?アリスは望宮が思ってる十倍は望宮のことを好きだって思ってるから」


 …前アリス本人にも似たようなことを言われたが。


「もう俺たちは既に恋人になってて、アリスが俺のことを好きで居てくれてるっていうのはわかってるんだ、その前提で十倍も俺のことを好きだって言うのか?」


「うん」


 うん…って、そんなわけがない。


「もし望宮が何かの形で泣くようなことがあれば、アリスは望宮のことを泣かせた相手を平気で殺害…は、望宮と一緒に居られなくなるからって理由でしないかもだけど、それでも殺害を考慮するくらいはする、そのくらいアリスは望宮のことが好きなの」


「……」


「でも、私なら違う」


 …ソフィアなら、違う?


「私はもし望宮が何かの形で泣くことになったとしても、その相手を望宮の二倍くらい泣かせるだけで気が済むし、アリスよりは融通も効く…だから望宮、アリスのためにも、アリスとは別れて私と付き合わない?」


「え…?アリスのため…?」


 ソフィアが俺のことを好きだということにまだ衝撃を隠せないが、衝撃がすごすぎて感情が追いついていない…だから今はそれよりも、アリスのためという言葉が気になる。


「そう、だってもし望宮が泣くようなことになったら、最悪アリスは犯罪者になっちゃうんだよ?そうなったらアリスと望宮は会えなくなっちゃって、アリスは望宮と会えなくて相当悲しくなると思う」


「っ…!」


「そんなの望宮だって見たくないと思うし、私だってアリスの親友としてアリスのそんな姿見たくない」


「アリスの、親友…」


「うん、親友の悲しんでるな姿を見たくないのなんて、


 …そうか、アリスのことを考えているという点で、俺とソフィアは同じなんだ。


「だから…望宮────」


「…ソフィア?私を本気で怒らせたいようですね」


「…え!?」


 俺の部屋のドアの前から、アリスの声が聞こえてきた。

 …その声は、まさに冷徹という言葉の代表例としても扱われそうなほどの声音だった。

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