第58話 狙ってる人の恋人が留守の間に仕掛けるのなんて、海外では普通だから

「望宮〜!望宮って好きなものとか無いの?」


 休み時間、ソフィアは自分の席に座りながら同じく自分の席に座っている俺がそんなありきたりなことを聞いてきた。


「え、好きなもの?」


「うん、好きな食べ物とか、趣味とか!」


 …確かに今までよく喋ったりしている成り行きとは言っても家に行ったこともあるのに、互いに互いの好きなものとかは知らなかったな。


「好きな食べ物か、例えば────」


「望宮さん!ソフィアにそのようなことを話してはいけません!」


 俺がソフィアと好きなものについて話そうとしていたところに、アリスがその会話を止めに入った。

 アリスは俺の隣の席で、ソフィアは俺の後ろの席…つまり、俺とソフィアが自分の席で話す場合、必然的にアリスにも俺たちの会話が聞こえることになる。


「え、どうしてだ?」


「望宮さんが好きな食べ物に、ソフィアが睡眠剤を入れてしまうかもしれないじゃ無いですか!」


「睡眠剤って…そんなことするわけないだろ?なぁ、ソフィア?」


「…も、もちろんよ、そんなことするはずがないでしょ?」


「その割には動揺しているようにお見受けしますが」


「ど、動揺?してるわけないでしょ」


「……」


 本当に俺の好きな食べ物に睡眠剤なんて仕込む気だったのか。


「でも、どうしてソフィアがそんなことをするんだ?も、もしかしてまた俺は何かソフィアのことを怒らせたりしたのか?」


 最近はソフィアとも良好な関係を築けていたと勝手に思っていたが…一体俺が何をしてしまったんだろうか。

 睡眠剤を入れられるようなこと…?

 …した覚えがない。


「望宮さん…!?もしかして、まだ気づいていないのですか!?ソフィアは望宮さんのことを────」


「あああ〜!聞こえない聞こえない!アリスはちょっと黙ってて!」


「黙っててとは何ですか!私は望宮さんの恋人なので、望宮さんと会話するのであればまずは私のことを通してください!」


 二人はいつものように口喧嘩をしている。

 …毎日毎日口喧嘩して、逆にすごいなこの二人は。

 それにしても…ソフィアは俺のことをどうしようと思ってるんだ?

 睡眠剤、睡眠剤…まさか、拉致監禁!?

 俺が最悪な想像を色々としながらその日を過ごし…そして、放課後。


「望宮さん…」


「…アリス?どうかしたのか?」


 今から一緒に帰ろうとしたところで、アリスがとても落ち込んだ様子で口を開いた。


「本日私はどうしても無視できない様子があり、望宮さんと一緒に過ごすことができません…」


「あぁ…それは仕方ない、また明日にでも一緒に過ごそう」


「はい…ですが安心してください!望宮さんのことは、しっかりと私がご自宅にお見送りします!」


「忙しいなら、そんなことしなくても────」


「いいえ、どんな時も望宮さんのことが第一です」


「…ありがとう、アリス」


 その後アリスは宣言通り俺のことを家まで見送ると、背を見せて歩き去っていった。

 俺も自分の部屋に上がり、制服から私服に着替え、くつろ────ごうとした瞬間に、インターホンが鳴った。

 …何か宅配でもしていただろうか。

 そう思い、俺は玄関のドアを開け────


「望宮、家上げて!」


 インターホンを鳴らした人物は…ソフィアだった。


「ソフィア…!?家上げてって、何でだ?」


「狙ってる人の恋人が留守の間に仕掛けるのなんて、

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