第55話 恋人の可愛いお顔を多少強引にでも拝見したいのなんて、海外では普通ですよ?
アリスと恋人になった次の日。
昨日は土曜日で、今日は日曜日、一日を自由に使えるということで早速アリスと出かけることとなった。
「望宮さん、おはようございます」
「おはようアリス」
俺の家のインターホンが鳴らされ、俺は家を出てアリスと合流すると、お互いまだ朝ごはんを食べていなかったため朝ごはんを食べに行くことにした。
「アリスは何が食べたい?」
「私は望宮さんを食べたいです!」
「…餅か?確かにアリスは海外の育ちだし、餅は日本特有のものだもんな、日本人の俺ですら餅は正月ぐらいにしか食べな────」
「この国で有名な食べ物のお餅ではなく、私は望宮さんを所望しています」
アリスに対して聞き間違えたふりをするおとぼけは通用しないようだ。
「そ、そう言われても…俺は食べ物じゃないからな」
「嘘をつかないでください」
「どうして今のが嘘────っ!?」
俺がアリスの意見に疑問を呈しようとしたところで、アリスが突然俺の唇を奪った…ようは、周りに人は居ないものの外で堂々とキスをしてきた。
やがて唇が離されると、アリスは言った。
「こんなに美味しいのに、望宮さんが食べ物でないはずがありません」
「っ…!からかうな!」
「ふふっ」
その後。
朝食を済ませた後、アリスが俺とジムへ行きたいと言い出したため、俺たちは一番近くのジムに向かっていた…のだが。
「あ、そこのカップルお二人さん!」
営業スマイルというものをしているのが少しみただけですぐわかる男の人が突然話しかけてきた。
「カップル…私たちのことですか?」
「そうそう!今、カップルさん限定で、宿泊料が割引になってるから、よかったら見学だけでもしてみない?」
アリスがカップルという言葉に釣られてあのよくある誘い文句を聞かされてしまっている…!まずい。
「いえ、特に宿には困っていないので結構です」
なんだ…しっかりと断れるのか。
てっきり日本慣れしていないから、上手く対応できないのかと思ったが、この様子なら大丈夫そうだな。
「そう?お二人さんみたいなお似合いのカップルさんなら、きっと楽しい思い出になると────」
「詳しくお聞かせください」
「アリス!?」
アリスが何故かいきなり意見を変えた。
「話聞いてくれる気になった?このホテルは、夜色々と困らな────」
「アリス、早く行こう」
「も、望宮さん!?」
俺はアリスの手を少し強引に引いて、おそらくは集客が仕事のあの男の人から離れた…そして。
「す、すみません…お似合いだと言われ、つい舞い上がってしまいました」
アリスが反省を口に出した。
「わかったなら大丈夫だ」
「恋人になって次の日にこのような失態…望宮さんのことを守ると言ったのに、恥ずかしい限りです」
「互いが互いを支える、それが恋人のあるべき姿だと俺は思う」
「望宮さんのそういった言葉をすぐにかけてくださるところ、本当に尊敬致します」
俺たちは改めてジムへと向かい、レンタルできるトレーニングウェアを着てお互いにランニングマシンの前へとやって来た。
「じゃあ、アリス────」
「望宮さんの足がズボンではなく直に見えます…!さ、触らせていただいてもよろしいでしょうか!?」
「どこに注目しているんだ!って、それよりも絶対くすぐったくなるからやめ────」
「すみません、望宮さんの可愛いお姿を見たいので、勝手に触らせていただきます」
「や、やめろ…!」
「恋人の可愛いお顔を多少強引にでも拝見したいのなんて、海外では普通ですよ?」
その後俺は足だけに収まらず、腹筋や腕なども触られ、しばらくの間体から魂が抜けたように呆然となってしまっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます