第54話 男を奪うのなんて、海外では普通でしょ?

 アリスに呼び出されたソフィアが、俺の家のインターホンを鳴らしたため、俺とアリスは一緒に家の前に出た。


「アリス、用事って何?忙しい私のことをいきなり呼びつけるぐらいなんだから相当大事なことなんでしょ?」


 そこには、腕を組んで何故呼び出されたのかを知りたがっているソフィアの姿があった。


「お忙しいとは知りませんでした、ではまた日を改めさせていただくので、どうぞお帰りください、ご足労ありがとうございました…望宮さん、家の中に戻りま────」


「ちょ、ちょっと!嘘よ!別に忙しくないから!…それに、せっかく足を運んだのに何もせず帰るなんてもったいないでしょ!」


 …完全に、ソフィアがアリスに遊ばれているのがわかる。


「そうですね…では、前置きなく言わせていただきます────つい先ほど、私は望宮さんとお付き合いすることになりました」


「はぁ!?何でいきなりそんなことになってるわけ!?」


 アリスからの突然の告白に、ソフィアは驚いている。

 アリスの方から俺に対して好意を向けてくることはあっても、俺からアリスに対して恋愛的な好意を向けたことは今までは無かった…というか、仮にあったとしても俺が無意識のうちにその感情を閉じ込めていたため、ソフィアからしてみれば本当にいきなりのように感じてさっぱり意味がわからないだろう。


「もちろん、愛があるからです」


「アリスからは愛を見せてたけど今まで望宮からそんな好意見せて無かったじゃん!それがどうしていきなり付き合うなんてことになるの?」


「その過程まであなたに説明する義理はありません」


 アリスはソフィアのことを俺から少し遠いところへと連れて行った。

 …何か積もる話でもあるんだろうか。


「あなたも積極的になったりして頑張ってはいましたが…あなたの言葉を借りるのであれば、恋愛という勝負でも、私の勝ちですね…あなたが私に全力を出せと伝えてきた結果です」


「はぁ?何言ってるの?」


「…何か、間違ったことを言いましたか?」


「まだ付き合い始めたばっかのくせに、何言ってんの、アリスなんて愛重すぎて、きっと望宮なら一ヶ月も耐えれないって」


「なっ…!」


 遠目からでもわかるほどに、アリスが虚を突かれたリアクションをした。

 …ソフィアに何を言われたんだ?


「それにねアリス…男を奪うのなんて、?」


「…ふふ、そうかもしれませんね、ただ────そんなことは不可能です、望宮さんは絶対に浮気などするような方ではありませんし、あなたが望宮さんを誘惑した場合は私が望宮さんのことをお守りいたします」


「…アリス、今日からは、ちょっと大人な勝負の始まりね」


「私はこんなもの、勝負とすら思っていません…絶対に負けることが無いのですから」


「…ん」


 話が終わったのか、ソフィアがこの家の前を後にして、アリスが俺の方に戻ってきた。


「アリス?ソフィアとどんな話を────」


「望宮さん」


 アリスは俺のことを優しく抱きしめた。


「…アリス?」


「…絶対に、あなたのことを守ってみせます」


「……」


 俺にはよく状況が掴めなかったが、アリスから温かいものを感じたため、俺はそれに応じてアリスのことを優しく抱きしめ返した。

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