第53話 恋人に不意打ちでキスをするのなんて、海外では普通ですよ?

 アリスの告白に対する返事…今の俺には、もう一つしか見えない。

 思えばアリスと出会ってからの短い時間で色々なことがあった。

 出会って数日でいきなり愛を伝えられてハグをされて、ストーカーだったり、体育では俺のことを守ってくれたり、アリスの部屋に泊まったり、その後はアリスの幼馴染のソフィアとも色々関わったり…とにかく色々なことがあった。

 今日は、その中でも一番大きな日となるだろう。

 何故なら────


「アリス、こんな俺で良ければ…恋人として、よろしくお願いします」


 ────俺がアリスの告白を受け入れる日だからだ。


「っ!望宮さん!」


 アリスは嬉しそうな表情で俺に抱きついてきた。

 …アリスのことはあのテストのご褒美の時以外抱きしめたことは無かったし、今までなら抱きしめられたとしても抱きしめ返すことはしなかったが。

 今はもう俺とアリスは恋人だ。

 俺は自然に、アリスのことを抱きしめ返した。

 …これからは、アリスから愛を貰うだけじゃない。

 俺もアリスのことを愛するんだ。


「んっ…!?」


 その直後、口を開き何かを喋ろうとしたが、アリスが自分の口で俺の口を塞いでしまったため、声を出すことができなかった。

 …って、そうじゃない!これは…キス!?


「っはぁ…あぁっ、待ち焦がれた望宮さんとのキス…」


「ア、アリス、確かにアリスからしてみればずっと想ってくれていたから俺が告白を受け入れたのは嬉しかったのかもしれないが、いきなりキスっていうのは────」


「恋人に不意打ちでキスをするのなんて、?」


「うっ…」


 それは…全く否定することができない。


「本当に、素晴らしい気分です…こんな気持ち人生で味わったことがありません、私は本当に、望宮さんと恋人になれたのですね…」


「…あぁ、それだけは間違いない」


「望宮さん…!本当に、嬉しいです…!」


 アリスはまたも俺のことを抱きしめた。

 …本当に嬉しいのだろう、アリスの表情が今までで一番嬉しそうな表情になっている。


「…望宮さん、恋人になったということですし、いち早く私は望宮さんにこの愛情を身からも心からも伝えたいので、ベッドへ行きませんか?」


「え、え…!?な、何する気だ!?」


「言わずとも、すぐに行動に移しますので」


「ま、待ってくれアリス!」


 俺はいつもより少し声をあげて俺のことをベッドに連れて行こうとするアリスのことを止める。


「…そういうのは、ちゃんと順番を踏んでからだ、海外では普通だと言われても、そこだけは譲れない」


「そうですか…ではわかりました!今から、この家の前にソフィアのことを呼び出します」


「え、ソフィアを!?どうして!?」


「決まっているじゃありませんか、私たちが恋人になったということをソフィアに報告するんです」


 なるほど…別に構わない、が。

 ソフィアがどんな反応をするのか、全く想像できない。

 アリスがソフィアのことを電話で呼び出している間、俺はアリスとの今後について色々と考えていた。

 俺たちは、本当に…恋人になれたんだな。

 アリスの告白を受け入れることができて、俺もこれからはアリスのことを愛すると決意することができた…俺は今日、良い意味で大きく成長できたのかもしれない。

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