第45話 殿方のお洋服を仕立てるのなんて、海外では普通ですよ?
「望宮さん!」
放課後に入った途端、席から立ち上がった俺にアリスが俺の名前を呼んだかと思えば、真正面からハグをしてきた。
「な、なっ…!?」
俺はただただ目の前の現実が理解できなかった。
「本日は色々と疲れてしまいましたので、望宮さんに抱きつくことで私のことを癒やさせてください、はぁ、癒やされます…」
…我慢しないとは言っていたが、まさかここまで露骨に我慢をやめるとは。
俺はアリスのことを俺から少し離した。
「え、どうしてですか!ハグは前もしたじゃありませんか!」
「そっちが一方的にしてきたんだろ!それに、アリスの雰囲気に気圧されてすっかり忘れてたけど、アリスだって転校初日に俺の腕を組んできてただろ!?」
「え、そうなの?」
近くに居たソフィアが俺の言葉に驚いている。
「確かにそうでしたが、正直…あの時は出会ったばかりで遠慮していて、腕は組んでいましたが腕を組むということにカウントするほどの腕組みでは無かったと思います、その時も私は海外では普通だと返答したはずです」
…アリスの言う通り、あの時はアリスが笑いながら「こんなの、海外では普通ですよ?」って言っていたんだ。
まだ一ヶ月くらいしか経っていないのに、もう随分と昔なことのように感じる…それは、俺とアリスの距離が深く縮まったからそう感じるんだろうか。
「あ!ねぇねぇ望宮、今日も良かったら私の家に────」
「望宮さんは私とお洋服を見に行くことになっています、なのであなたは大人しく一人で家にお帰りください、途中までなら私が見送って差し上げますよ?」
え…服を見に行く?
そんな話一切聞いていない。
「そんなの絶対付いて行くに決まってるじゃん!学校で求められる能力は今までギリギリ負け続けてきてようやく今回の中間テストで引き分けたけど、ファッションに関しては私の方がアリスよりも詳しいんだから!毎日ファッション雑誌読んでるからね!」
毎日ファッション雑誌というのは思っているよりもすごい量のファッションを見ているんだろうな…なるほど、学校で求められる能力でアリスに勝つことは今まで無かったが、その他の分野ならソフィアに分が出ることもあるのか。
「面白いことを、いくら種類を増やそうとも、質には勝てませんよ」
「量あってこその質だから、数も知らないのに質なんて追求できるわけないでしょ」
「……」
「……」
俺はこの先の未来がわかってしまったため、それに巻き込まれないために勇気を出して口を開いた。
「じゃ、じゃあ俺、帰るから────」
「良いでしょうソフィア、ではこのファッションの国日本にてファッションセンスの勝負をしましょうか、勝負内容は望宮さんのコーディネート、より似合っているお洋服をコーディネートできた方の勝利、どうですか?」
どうして俺が巻き込まれているんだ…!?
「ま、待ってくれ、どうして俺なんだ!?」
「好きな殿方のお洋服を仕立てるのなんて、海外では普通ですよ?ソフィアも、まさか断るなんて言いませんよね?」
「いいよ、後悔させてあげる、審査員は望宮自身ってことで」
…俺は何故か、二人の勝負の真ん中に立たされることとなってしまった。
しかもその勝負の結果を決めるのが俺なんて…どうすればいいんだ!!
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