第46話 お召し替えをお手伝いしたいのなんて、海外では普通ですよ?

 やって来たのは洋服店がたくさんあるらしいビル型の建物。

 俺が案内したわけでもないのに、近いというのと洋服店がたくさんあるからという理由で、二人ともがこの場所を提案し俺たちはここにやって来た。

 …日本でのファッション関連の場所もしっかり押さえているということは、やはり二人ともがファッションに対して真面目に向き合っている証拠なのかもしれない。


「ソフィア、望宮さんという最高級のモデルをコーディネートしてもし似合わないようなものを選んだとあれば、二度とファッションに関しては自信があるなどと言わないでくださいね」


「その言葉そっくりそのまま返すから」


 そして二人がフロアマップを見てどのお店に行くのかを決めると、俺は二人に手を引かれてそのお店に連れられた。


「このお店、メンズの服が多いから望宮をコーディネートするのに何にも困らないと思うよ」


「そうですね…では、早速私たちはお洋服を選んでくるので、望宮さんは試着室の前でお待ちください」


「わ、わかった」


 俺は二人の本気感を肌で感じ、言われるがままに試着室の前へと向かった。

 …二人とも自信満々だったが、本当にメンズの服コーディネートできるのか?

 二人とも女子なわけだし、普段見てるのはおそらくレディースの服…


「って、俺が考えるのはそんなことじゃない、この後の勝負の行方だ」


 俺が答えを出さないといけないんだ…どっちかを勝たせてしまうとどちらかが不満を持ってしまい、暗い雰囲気になってしまう可能性がある…それだけは避けたい、が。

 かといって引き分けなんて言ったらおそらく怒られるだろうし…

 本当に…どうすれば良いんだ?

 俺がひたすらそのことに対して思考を巡らせていると、アリスとソフィアが同じタイミングで服の入ったカゴを持って俺の居る試着室前へと来た。


「先にアリスからでいいよ」


「…随分と上からですね、ですがその通りにさせていただきます、先に私が望宮さんのことをこの上無いほどコーディネートして差し上げて、あなたがどのような服を選んでいたとしても無意味にしてみせます」


 するとアリスは服の入ったカゴを俺に手渡した。


「では望宮さん…お願いします」


「あぁ、着てくる」


 俺はアリスから受け取ったカゴを手に持ち、試着室の中に入った。

 …服が綺麗に畳まれていてどんな服かわからなかったため、まずは服をカゴから取り出してみたが…二着あるな。


「白のパーカー服に黒の羽織もの…に白のズボン?」


 なんだこの俺には似つかわしく無いオシャレすぎる服装は。


「…アリス?本当にこの服を俺が着るのか?」


「はい!安心してください!絶対に望宮さんにお似合いです!」


「…わかった」


 着る手順はパーカーが中で羽織ものを上…だよな。


「望宮さん!もしよろしければ私が服を脱ぐのと着ていただくのをお手伝いいたしましょうか!」


「そんなこと普通しないだろ!」


「好きな殿方のお召し替えをお手伝いしたいのなんて、?」


「だとしても!今回ばかりは譲れない!!」


「…そうですか」


 アリスはわかりやすく落ち込んだ声を出した。

 …少し申し訳ない気持ちになってしまうが、俺は気にせずなんとか自分で着替え終えた。

 そして着替え終わった俺は、その自分の姿が映っている全体鏡と向き合う。


「…やっぱり俺にはちょっとオシャレすぎないか?」


 そう思いながらも、俺は試着室前に居る二人に声をかけた。


「着替え終わったから、もう出てもいいか?」


「はい、是非!倒れる準備はできています!」


「アリスの選んだ服なんて、どうせ私のに比べたら大したことないでしょ」


 とりあえずアリスが本当に倒れないかだけは気にかけておきながら、俺は試着室の外に出て、二人と向き合った。

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