第16話 男女でも隣で眠るなんて、海外では普通ですよ?
「…アリス?」
「何ですか?」
「どうして髪を乾かしてないんだ?」
俺の場合はどこで髪を乾かせばいいかわからなかったから髪を乾かすことができなかったが、アリスの場合は自分の家だから髪を乾かせない理由は特に無いはずだ。
「せっかく望宮さんがいらっしゃるので、私も髪を乾かしていただこうかと」
「そんな長い髪多分上手く乾かせない」
アリスはサラサラの白髪で、その髪の長さは肩よりも長く背中の半分くらいの長さがある、そしてその長い髪をサラサラにキープできているのにはきっと乾かし方なんかにもこだわりがあるからだ。
そんなこだわりに俺が応えられるかと言われればもちろん首を横に降る。
「構いませんよ、私は髪を乾かして欲しいのではなく、望宮さんに髪を乾かしていただいているという状況を望んでいるだけですから」
アリスはわかるようなわからないようなことを言う。
…異性の友達同士ですることなのかは疑問だが、特に危ないことでもないし断るようなことでも無いので俺はそれを承諾した。
「では…お願いします」
アリスは鏡が付いている白色のテーブルの前に座り俺に髪を乾かすようお願いしてきたため、俺はドライヤーでアリスの髪を乾かし始めた。
「……」
俺はアリスの髪を触ってみて改めて思う。
髪の毛が信じられないほどサラサラだ。
触り心地が良くずっと触っていたいが、髪を乾かすというのが本題なためあくまでもそこは逸らさないように意識する。
そして五分ほどドライヤーで髪を乾かしてから、しっかりと冷風も当てる。
「…望宮さんに髪を乾かしていただくというのは、良いものですね」
「そうか…?…そうかもな」
俺はさっきアリスに髪を乾かされた時のことを思い出しながら言う。
「はい…なんだか、共に生活している感じがあってとても良いです」
俺はなんとなく目の前にある鏡を見てみる。
そこには、アリスの髪を乾かしている俺が映っていた。
…それを客観的に見た俺は、なんだか。
────しっくり来ていた。
「望宮さん?どうかされましたか?」
「…なんでもない」
俺はアリスの髪を乾かし終えたため、ドライヤーの電源を切ってドライヤーをテーブルの上に置いた。
「望宮さんが部屋に居るというのはなんだかとても楽しいですね、胸が高鳴ります…本日の睡眠場所について提案があります」
ここまで来たらもうわかってはいたが、俺は本当に今日この家に泊まるのか…
「睡眠場所の提案?」
「はい、私の部屋にあるベッドで一緒に────」
「それだけは絶対にダメだ!」
ここだけは絶対に譲れないということを伝えるために俺はアリスが最後まで言う前に制止した。
「そうですか…では残念ですがベッドを別の部屋から持って来てベッドを隣り合わせにして眠りましょうか」
この部屋は広いためそんなこともできそうではあるが…
「そんな手間になるような────」
「手間というのは私が望宮さんの近くで一緒に眠りたいという欲を止める弊害にはなり得ません」
「待ってくれ、手間じゃ無いにしても隣で寝るのは…」
その先の言葉を言おうとしたところで、俺は口を止めた。
「…望宮さんが言わないのであれば、私が代わりに言って差し上げます、きっと私の隣で眠るというのは、望宮さんも恋心がドキドキするのでしょう」
「…は!?恋心!?何言ってるんだ!そうじゃなくて、俺はただ緊張とか、男女がそんな近くで寝るっていうのは────」
「男女でも隣で眠るのなんて、海外では普通ですよ?…それに、恋心のドキドキで無いと言うのであれば、隣で眠られるはずです…それとも、同じベッドで一緒に眠りますか?」
アリスはこのままだと誤解を続けていきそうなため、俺は決断をした。
「────わかった、なら隣にベッドを並べて寝るっていうことで手を打つ」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
アリスは嬉しそうに笑顔を見せた。
…この笑顔は無邪気なのが、アリスのずるいところだ。
俺とアリスは一緒にベッドを別の部屋からアリスの部屋のベッドの隣に運び、部屋の電気を消した。
「…望宮さん」
「なんだ?」
「お泊まり会は電気を消してからが本番、ですよね…」
「……」
「…望宮さん?」
俺は意味のわからないことを言うアリスを無視して、すぐに眠ることにした。
だが、ここで俺がアリスのことを無視したことによって、俺は翌朝衝撃の目覚め方をすることになってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます