第14話 見ただけでわかるなんて、海外では普通ですよ?

 アリスの家に招かれた俺は、まずそのリビングの家具の豪華さに驚くことになった。


「すごいリビングだな…」


「そうですか?」


 アリスにとってはきっと、すごくもなんとも無いことなんだろうが、それでも俺にとってはこんなにも海外の洋風な家具がいっぱいあるのは新鮮だった。


「あぁ、新鮮で見てて飽きない」


「それはよかったです、本当は私の部屋にお連れしたいのですが、その前に本日は私の手料理を振る舞わせて頂こうと思います」


「手料理…」


 リビングから見てすぐの場所にキッチンがあるようだ、おそらくはあそこで料理をするんだろう。


「その前に一つ聞きたいんだが」


「なんですか?」


「もし俺が今から帰りたいとか、アリスが料理してる間にこっそり帰ったりしたらやっぱり明日学校に来た時怒ったりするか?」


「いえ、今日は絶対に帰しませんからご安心ください」


 …ん?

 俺は少しこの言葉に引っかかりを覚えたため、その引っかかりを無くすべくアリスに質問する。


「…今日はじゃなくて、ご飯を食べ終わるまでだよな?」


 アリスも日本語が饒舌なように見えるが、そうは言っても日本語に慣れていないことに変わりはない、きっと間違えてしまったんだろう。

 そう思ったが…


「そのくらいの違いはもちろんわかっています、…ですよ」


「…え?」


 ということは…?つまり…?

 どういうことになるんだ?


「ですから!本日はお泊まり会だということです!」


 俺はいきなりの言葉に思わず大声を出してしまう。


「はぁ!?ちょっと待て!聞いてない!」


「今言いましたから」


「そういうことじゃなくて…!」


 大体俺は鍵とスマホしか持って来てないし、今すぐお泊まり会なんて言われてもそんなことは不可能だ。


「安心してください、望宮さんのサイズに合わせたお着替えも、予め用意させてもらっています」


「どうして俺のサイズがわかったんだ!」


「好きな殿方のスリーサイズを見ただけでわかるのなんて、?」


 …その次元までいくともはや普通に恐怖できるほどの次元だ。

 …だが問題は他にもある。


「お風呂は、寝る場所はどうするんだ?」


 俺は畳み掛けるように言う。


「お風呂はどちらが先に入るかを決めれば良いだけですし、寝る場所に関してもしっかりと確保しています」


 アリスは全く抜かりがないようだった。

 …え、本当にこれからお泊まり会をするのか?

 …家でご飯を食べるくらいなら友達同士でもおかしくはないが、お泊まり会をいきなり異性であるアリスとするっていうのは。


「アウトだな」


 俺はそう即決し、力づくでその場から逃げることにした。

 リビングを離れ、玄関に────移ろうとしたところで、後ろから捕まえられてしまった。


「っ!?」


「逃しませんよ」


 アリスのその目は、とても好きな人を見つめるような目では無かった。

 …普通に怖い。

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