第12話 疑うのなんて、海外では普通ですよ?

 俺は約束通りアリスのことを家に招くと自分の部屋にあげた。


「じゃあ、ちょっと待っててくれ、水を入れてくる」


「はい!」


 俺は二階にある自分の部屋から降りて一階にあるキッチンの冷蔵庫を開けて水を取り、それをコップに注ぐ。


「…勉強のためとはいえ、女子が自分の部屋に今居るっていうのは、なんだか不思議な感覚だ」


 …あくまでもこれは勉強のためということを強く意識しよう、それで余計なことは考えずに勉強にだけ集中できる。

 そう思い水を注いだコップを持って二階に上がり、自分の部屋に戻ったのだが。


「ア、アリス!?何してるんだ!?」


「望宮さんを堪能しています」


 アリスは俺の枕を抱きしめるようにして抱えている。


「た、堪能してるって…まさかそれも海外では普通なんて言わないよな?」


「はい、これは私がしたいからしてるだけです」


 いっそのこと海外では普通であってくれた方がまだ救いがあった…


「とにかく、今日は勉強を教えてもらうために俺の部屋に来てもらったんだ、勉強を始めよう」


「わかりました」


 それから言っていた通りに俺が苦手な歴史の勉強を教えてもらうことになった。

 アリスは教え方が上手で、俺がわからないところなどをどうわからないかまでも分析して的確に俺が欲しい言葉で教えてくれる。


「アリスは本当に頭が良いんだな」


「ただ記憶しているだけです」


「そうじゃなくて、教え方が上手いんだ」


「そうでしょうか…ありがとうございます」


 そしてまた引き続き勉強を続けていると、トラブルが起きた。

 アリスがペンを取ろうとしたときに、コップに手が当たってしまい、それがアリスの制服に溢れた。


「あ…大丈夫か!?」


「はい、すみません…」


 幸い俺たちは室内なため制服の上着は脱いでおり、アリスはブラウスなので乾かそうと思えばすぐに乾きそうだ。

 …だが、ブラウスは透過性がすごく、水に当たればその下までが透けてしまう。

 そのため薄らとだが今はアリスの下着が見えてしまっている。

 俺は極力見ないようにして口を開く。


「気にしなくていい…それより、一旦その制服は脱ぐか?冷たいし、風邪を引いたりするかもしれない」


「問題ありません、少し水がかかったくらいでは風邪なんて引きませんよ」


「風邪を引かなくても、目のやり場に困るから一旦脱いでくれ、俺は目を背けてるから」


「目のやり場…?」


 アリスは自分の胸元あたりを見た。


「あぁ、別に気にしなくても構いませんよ、下着とは本当に大切なものを見えなくするものであってそれ自体が見られて恥ずかしいものではありませんから」


「それでも気にしないなんて無理に決まってるだろ!」


 常に視界にそんなのが入ってたんじゃ勉強に集中したくても集中できない。


「そうですか…ですが、脱いだ後はどうするんですか?替えの服などは持ってきていな…あ!下着で過ごせ、ということですか!?」


「そんなこと言うわけないだろ!俺の服を着てもらう、サイズは大きいかもしれないが許してくれ」


「望宮さんの…お洋服を!?」


「嫌なのか?」


「いえいえ!着ます!着させていただきます!いっそのことこれからは毎日濡れて望宮さんのお洋服を着させていただきたいです!」


「それはやめてくれ!」


 …だが、今回の件がわざとで無いことはわかるため、俺の長袖を渡してから一度部屋を出て、着替え終わるのを待つことにした。

 そして着替え終わったとの報告があったため俺は部屋に入る。


「望宮さんの服、どんな服よりも暖かいです」


「そんなことはないと思う」


「ありますよ…ところで望宮さん、私は一つお聞きしたいことがあるのです」


「ん…?」


 アリスは強引に俺の手を取ると、ベッドに座らせた。

 俺はアリスの顔を見上げ…た。


「ここまでしても何もアクションがないと言うことは、やはりもうすでにパートナーの方が居る、ということでしょうか?」


「何言って────」


「望宮さんのような優しい方だとしてもこと恋愛であれば疑うのなんて、?」

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