その17。「シンシア様の家に行くらしい」
「———それじゃあ行くわよ!」
「……僕も行かなければならないのですか?」
「当たり前じゃない。どうせ後数年すれば私の家に来るんだから、部屋の配置とかその他もろもろ? を知っておかないといけないのよ!」
及び腰の俺にシンシア様が、まるで誰かに言わされたかの様に難しい言葉を使いながら言ってくる。
しかしイマイチ意味が分かってないのか若干疑問系で言っているが。
まぁ5歳で諸々とか言う言葉は知らなくて当然だもんな。
知っている方がおかしいまでもがある。
「これは当主様とシルフレア家の当主様の命令です。残念ながらセーヤ様に拒否権はありませんよ」
横からしれっとトドメを刺してくるセイドをキッと睨みながらも、一度ため息をついて諦める。
すると俺の頭の上にフレイヤが小さな竜の姿で乗り、慰めてくれているのか尻尾が俺の後頭部を優しく撫でた。
「……行きましょうか」
「ええそうね! じゃあセーヤは此処に乗りなさい!」
シンシア様が俺の腕を引っ張って馬車の中の自分の座る所の横に連れて来た。
それと同時にセイドが馬車の扉を閉める。
これで遂に何処からも逃げることは出来なくなってしまった。
こうして半強制的に俺の唐突な実習が幕を開けた。
「「「「「「「———お帰りなさいませ、シンシアお嬢様」」」」」」」
馬車で揺られること10時間強。
遂に俺はシルフレア家にやって来てしまった。
そして先に馬車を降り、シンシア様にてを差し出してエスコートすると、扉を開けたメイド以外の10人ほどのメイドが一斉に、まるで軍隊の様に一糸乱れない礼をした。
ファンタジーでしか見たことのない光景に俺は圧倒される。
こ、これが公爵家か……!
俺ってこんな堅苦しそうな場所でこれから過ごさないといけないのか……?
い、嫌だ……!
俺が将来のことで本気で後ずさっていると、シンシア様がガシッと俺の腕を掴み、子供とは思えない凄みの効いた笑みを浮かべて言う。
「何処行こうとしているの? ———アリア、セーヤを宜しくね」
「承知致しました。シンシア様、お風呂の準備が出来ておりますのでお先にお入りください。そして……セーヤ、こっちに来なさい」
この家のメイド長———そして我が家のママが、シンシア様よりも更に凄みの効いた笑みを浮かべて手招きする。
……どうやらシンシア様の笑みは我がママの影響らしい。
「い、いや、お、お母様……? ひ、久しぶりに会った息子に酷い事をしないで……?」
「勿論そんなことしないわよ? ただ……今日は家族の再開を喜ぶために来たわけではないでしょう? セーヤは何のために来たの?」
やめてママ、だんだんその笑顔が悪魔に見えてくるから。
「強制的に———え、えっと……将来の予行練習的な……?」
俺は真実を告げようとしたが、ママの顔が真顔になって来たのでとてもじゃないが言い切れなかった。
言い直すと、ママの顔が柔らかい笑みに変わる。
「よく分かってるじゃないセーヤ」
「あ、あはは……」
俺はもう乾いた笑みしか出てこなかった。
皆に紹介しよう。
彼女は俺のこの世界でのママで、俺にとっては師匠のセイドより100倍怖いお人である。
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