その18。「ストレス発散にはレベル上げが1番」
「………………もう帰りたい……」
公爵家に来たその晩。
用意してもらった部屋でベッドに倒れ込みながらそう呟く。
きっと今の俺の顔は魂抜けた様な表情していると思う。
大体なんで来たばっかりの俺に「アレ、何処何処に収めといて」とか「何処何処に居る誰々を呼んできて」とか言うんだよ。
それに場所が全く分からねぇから「それってどう行ったら行けますか?」って訊いたら「そんなのも知らないの? それくらい覚えておきなさいよ」ってなぜか怒られるし。
知らねぇに決まってんだろうが。
こちとらいきなり此処に来たんだぞ。
しかも1度も屋敷の案内とか人の紹介されてないし。
「そもそも6歳で出来ると思ってるアイツらの頭がおかしいだろ。 あー……考えるだけでイライラして来た」
俺はイライラを発散させるため、部屋の窓を開けて、【風魔法】を使ってとある場所まで飛翔した。
「———よし、到着っと」
俺は魔法を解除して、上手い具合に着地。
最近ずっと練習していたお陰で、大分体に負担が掛からない着地方法が習得出来た。
現在俺が居る所は、レベル60〜100のモンスターが生息していて、何体かは100を超えている奴までいる現世最恐の森———『禁忌樹海』と言う所だ。
此処はその名の通り禁忌の樹海で、人間では討伐出来ない様なモンスターが生息していたり、人間世界では違法の薬物の出生地であったりと大変人間にとって不都合が多い森のため、行く事をそもそも禁止されている。
そんな場所に俺が来た理由はと言うと———
「此処なら俺がいくら暴れても絶対にバレない……!」
思う存分暴れたいだけである。
ついでにレベルアップも出来れば御の字という算段だ。
「さて、早速入りますか」
俺は体に風魔法の【風の鎧】を纏うと、無造作に森の中に入って行く。
道には迷わない様にちゃんと魔力でマーキングもしているし、仮にそのマークが無くなっても、空を飛べば分かるので問題ない。
流石人間未開の地と言うだけあって、モンスターがうじゃうじゃ生息していた。
今俺の目の前に居るのは、
「フシューーフシューー」
と鼻息荒く此方を睨んでいるボアロードと呼ばれる猪系モンスターの王種だ。
体躯は10メートルを超え、全身鋼鉄の様に硬くて剣は達人でなければ刃が通らない。
更には猪のくせに突進の途中で直角に曲がって来たりしてくる。
レベルは女神が言うには80くらいだった気がする。
ステータスは大体3000程度で、【突進】【加速】と言うスキルも持っているはずだ。
このモンスターが人里に出没すると、冒険者達が総出で討伐するくらい危険なモンスターらしい。
「ブモオオオオオ!!」
そんなモンスターが、俺に向かって突進してくる。
しかし俺は特に驚かず、八つ当たり気味に即座に魔法を発動。
「猪のくせに牛みたいな鳴き声してんじゃねぇええええ!!」
俺から放たれた風の砲撃———【エアロバースト】が真正面からボアロードに直撃。
ズガァアアアアアアンンッッ!!
爆発音と共に俺の脳内に《レベルアップしました》と言うアナウンスが聞こえてきた。
どうやら一撃で死んだみたいだ。
砂埃が収まり視界が開けると、死んだボアロードを中心にクレーターが出来、周りの木は根っこから引き抜かれたり折れたりしていた。
その中にはトレントと言う樹木型のモンスターも居たらしく、幹が折れて死んでいる。
久しぶりに本気で魔法を使ったので、多少スッキリしたが、
「———まだまだ足りない……! もっと……もっとだ!」
俺は新たなサンドバッグを探しに森の中心部へと足を運んだ。
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