その15。「何かバレてるんだけど」
———翌日。
俺は自分のベッドで目を覚ます。
ベッドの近くの懐中時計に目を向けると、いつも起きる時間である5時を少し過ぎており、普通に寝坊していた。
「んん~~~はぁ。あー眠たい……」
俺は伸びをして眠い目を擦りながら起き上がると、自室の洗面所で顔を洗い、髪を整えて歯を磨いてから服を着替える。
正直貴族の俺がこんなに早く起きるなんて普通はおかしいが、この家は執事とメイドなどの使用人を輩出する名門なので、全てが規則正しいのだ。
「……こんな家に生まれたくなかったなぁ……」
俺は今まで何千回と思った事を口にしてから事実を後にする。
そしてそのままの足で外に出ると、地魔法で手と足に付ける重りを作り、早速筋トレ。
現在は合計200キロくらいあるが、ステータスがなまじ大人より断然多いため、軽く感じる。
……今度からもっと重くしよう。
「———セーヤ様、7時ですよ」
「ん?」
俺は重りを350キロまで増やしてランニングしていると、セイドが俺を呼びに来た。
どうやらいつの間にか2時間経っていたようだ。
「ありがとうセイド。それじゃあ体を流したらシンシア様を呼びにいってくるよ」
「分かりました」
俺は魔法を解除して軽くなった体を伸ばしながら家の風呂に向かう。
朝はシャワーしか浴びれないが、疲れた後だとそれだけでとても気持ちいい。
俺は体を拭いて燕尾服の様な服を身に纏うと、シンシア様の部屋に移動する。
コンコンコン。
「シンシア様、起きていますか?」
「……起きてるわ」
シンシア様が扉を少し開けて姿を現す。
常にサラサラでクセのない真紅の髪は少し寝癖が付いており、頭頂部の髪がピンっと立っている。
髪と同じ真紅の瞳は眠たそうにポヤポヤしていた。
白のキャミソールは寝起きのためか若干はだけでおり、とてもじゃないが男に見せてもいい様な格好ではなかった。
「……シンシア様、服を直してからもう一度呼んでください」
「………………へっ? ———あ、あ、ああああ…………み、見たわよね?」
シンシア様は、自分の服装を確認して、ボフンっと顔を真っ赤にして扉を一度閉めると、隙間から頭だけ出して涙目になりながら俺に聞いてくる。
俺は特に隠すこともないので、素直に頷く。
「僕が指摘したのですから見てますよ。服を着替えてから呼んでくださいね。髪は僕がやりますので」
「う、うぅぅぅぅ……分かったわ」
シンシア様は唸りながらも素直に扉を閉めた。
どうやら相当恥ずかしかった様だ。
多分俺もシンシア様と同じ年であればきっと慌てていただろう。
しかし前世の記憶がある俺からすれば何も思うことがない。
断じて俺はロリコンではないからな。
俺はその場でシンシアの合図を待った。
「……いいわよ……」
「それでは失礼します」
数分経った頃、シンシア様が扉を開けて、未だ若干恥ずかしそうに言った。
俺はそこにツッコめばより不機嫌になりそうなのでスルーして部屋に入る。
中には人間の姿のフレイヤが寝ていた。
「…………」
「セーヤは私に隠し事が多いのね。昨日の夜も1人で何かしていた様だけど」
俺がフレイヤを見て固まっていると、横でジト目のシンシア様が拗ねた様に言う。
どうやら昨日のことが何故かバレていた様だ。
俺が何故バレたのか不思議に思っていると、窓の外から昨日襲撃者がいた木が見えた。
それと同時に全て見られていた事を理解する。
「次からはちゃんと私に教えるのよ。セーヤは私のしつじなんだから」
シンシア様の言葉に俺は素直に頷く他なかった。
……俺って隠し事苦手なのかも。
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