第8話 何がだめだったんだろう
それから私はまた数年、恋愛をするのをやめた。
単純に誰かを好きになることやこのヒトいいなと思うこともなくなっていた。
人間、完璧な人なんかおらず必ずどこかしら欠点がある。
どんなに魅力的なヒトでもネガティブに感じてしまう要素が必ず存在する。
それが2回にわたる恋愛の失敗を経て得られた結論だった。
私はこの数年、先輩との恋愛がどうしてだめだったのかをずっと考えていた。
そして私はこれからどうしていくべきなのかを考えに考え、次のように答えを出した。
まず一つ、私の一目惚れ癖だ。
そのヒトのことが気になってしまうとそのヒトのことをちゃんと知ろうとせずに仲良くなろうとしすぎてしまう。
そして後々、私が抱いていた理想と現実とのズレに違和感を覚えてしまう。
この癖を今後持つことをなくし、理想を抱かずそのヒトの本質を見る必要があると思った。
二つ目は、絶対に揺るがない価値があるヒトを好きになろう、だ。
何となくの良さや優しい言葉や態度、そして私のことが好きだという甘い言葉の数々。
そういった価値のないものにときめいたり、魅了されたり、心奪われたりしないこと。
私が考える価値あるものだけを見定めて、運命の人を探し当てるということ。
それさえあれば他はいらない、なくても構わないというものを持ったヒト。
私はそう考えた時に、月並だがお金持ちな人がいいと結論が出た。
最初から大企業に勤めていて真面目で誠実なヒトなら、安定した高収入はもらえているはずだし、仕事をやめたりクビにされる心配もない。
たとえもし付き合った後や結婚後にそのヒトのマイナス面が見えてしまっても、お金持ちでさえあれば付き合い続ける価値はある。
先輩がどうしてだめだったのかを考えた時に、私にとって最も大切にしていた先輩のピアノという要素がなくなり、付き合い続ける価値が他に見当たらなかったのが大きかった。
三つ目は、お互いにずっと好きでい続けられる対等な関係であろう、だ。
先輩とはお互い両想いだった為、私自身も絶対うまくいくものだと信じていた。
でも、一度好きの度合いのバランスが崩壊してしまえば、重い気持ちを持った側が引っ張られてしまう。
"俺のこと好きじゃなくなったのかよ"と相手の好意が自分より軽いことを責めたくなってしまう。
そうならない為にも、私自身がずっと愛し続けられるようなヒトを好きになり好きになってもらう必要があると考えた。
その結論が出るまでおよそ3年の歳月がかかった。
そしてその3年でゆっくりと理解したのは、今まで私がしてきたような恋愛では上手くいかないということだった。
恋愛というものが相手に淡い期待を寄せたり、それが叶わずに泣いたり、そういったものはあくまで一部分で長く恋愛関係を維持していくのにはもっと根幹に芯のあるものが必要なんだと理解った。
それを頭でちゃんと理解しながら恋人という役を演じる必要がある。
自分のしたいことやしてほしいことで自分勝手になってはいけないんだと。
長い時間、私はそのことをゆっくりゆっくり頭とからだに言い聞かし、理解を馴染ませた。
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