第25話

☆☆☆


一番前を行くのはチナのコマだった。



チナのコマはあと3マス前に進めばあたりに止まる。



「チナ、頑張って」



横からノリコが応援して、チナは大きく頷いた。



お願い3が出て!



願いを込めて振ったサイコロは机の上をコロコロと転がって、そして4の目を上にして止まった。



息を止めて見つめていた4人が一気に脱力してしまう。



「4か……」



チナは悔しそうに呟いてコマを進めた。



「次は俺の番だな」



マサシはそう言ってサイコロを手に持った。



5を出せばあたりに止まることができる。



「ちょっと待って」



今まさにサイコロをふろうとした瞬間に止めたのはヒデアキだった。



「なんだよ」



「もう1度サイコロを見せてくれ」



その言葉にチッと軽く舌打ちをした。



ヒデアキにわたす前に手早くネリケシを取り外し、そして投げて渡した。



「なにもないよな?」



「うん。大丈夫みたい」



4人は念入りにサイコロを確認している。



「そんなに俺のことを疑ってるのかよ」



「念の為だ。お前ばかりがあたりに止まるのはおかしいだろ」



ヒデアキに言われてマサシは素知らぬ顔をして、肩をすくめた。



そのすきにまたネリケシをつける。



そしてサイコロを転がした。



勢いよく放たれたサイコロは床に転がって回転を繰り返す。



そして2つ隣の席までたどり着いたとき、ようやく止まった。



「あたりだ」



マサシはコマを動かして言う。



他の4人は青ざめた顔でそれを見つめていた。



誰もなにも言わない。



ただ、ヒデアキはカタカタと体を震わせている。



「仕方ないだろ。これはただの偶然だ」



マサシはヒデアキへ視線を向けた。



「や、やめろ!」



叫んだヒデアキはそのまま教室から逃げ出そうとする。



しかしその前にマサシは口を開いていた。



「俺は、ヒデアキの見た目の才能を奪う……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る