エピローグ ご報告

「初めまして、東堂とうどう夏希です」


「初めまして、季里の従姉いとこの美里です」


 美里姉さんに無事に恋が実ったことを報告したら、「紹介しなさい」と言われて、私たちが結ばれたこのカフェに来たんだけど……。


 空調が効きすぎなんですかね。


 私たちのテーブルだけ滅茶苦茶寒い気がするんですけど。


「季里から聞いていた通りとっても美人ですね」


「いえいえいえ……そんなことないです」


 これは珍しい光景。いつもの勢いがない夏希さん。


「だから女性をとっかえひっかえできてたんですねえ。羨ましいです」


 ちょい美里姉さん、一ミリも羨ましいなんて思ってないでしょ。


 てか、ここだけ寒い理由がわかった。


 美里姉さんが冷気を発してる。氷の女王みたいに。


「あっ……それはですね……」


 チラっとこちらを見られても。助け船は出せないよ。

 だけど、話さなくてもいいことを話しちゃったのは私だし。


「今はもう私一筋だから。安心し――」


「そうでなきゃ困る」


「……だよね」


 ごめん、夏希さん。援護射撃失敗しました。


「まぁ、正直過去のことはどうでもいいです」


 おや。突然の方向転換。


「これからが大事なので」


 目の前に座った美里姉さんが、柔らかく微笑んで私を見た。


「季里が幸せなら私は口出ししない」


「美里姉さん……」


 一人っ子の私にとって、彼女は姉代わりで。

 いつだって私の味方で。


 そんな彼女が、後ろ指さされてもおかしくない私たちのことを応援してくれる。

 こんなに嬉しいことはないんだよ。


 目頭が熱くなって涙が溢れそうになる。


「だから、私の大切な季里を泣かせるようなことがあったら……どこに逃げようと見つけ出して地獄の果てまで連れて行きますからね」


 見事なノンブレス。


 夏希さんへの視線が冷たすぎて、涙が引っ込みました。


「わっ、わかってます。絶対幸せにします」


「約束ですからね」


「はっ、はい」


 あのー店員さん。早く飲み物を持って来てもらっていいですか。席について数分しか経ってませんが、この空気に耐えられません。


 まっ、夏希さんは今まで散々私をもてあそんできたんだから、これぐらい耐えてよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

先生、これは売春ですか? 佐久間清美 @kiyomi_sakuma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説