第3話 互いに、素直に2/4

「こんな素敵なお店があるなんて知らなかったなあ」


「そうですか」


 良かった。もし知っていたら、他の女の人と来ていたらどうしようかと思った。

 その場合、聞いてもないのに「前来たときは――」って思い出話をされる。

 完全に彼女のペース。


 でも、今日はそうじゃない。私のペースで、フィールドで話すために、わざわざ駅からちょっと遠いこの店を選んだんだ。


 ほっと胸をなでおろしつつ、緊張で喉が渇いて仕方がない。

 既に水が入ったグラスは空っぽ。


 早く店員さん来てください。干からびそうです。


「それで、どうしたの今日は。なんかあった?」


 疑問に思いますよね、そりゃ。


「はい。お話ししたいことがあって――」


「お待たせしました」


 店内が比較的すいているからか、思ったよりも早くコーヒーが運ばれてきた。ついでに水も。


 ありがとうございます。


 互いにコーヒーを一口飲んだところで、彼女をじっと見つめる。


「ん? どうしたの。もしかしてメイク崩れてる!? 汗かかないように来たつもりなんだけど」


 ちょい、やっぱりか。遅れているのがわかっていて、敢えて歩いて来たのか。

 全くもう……いや、今それは置いといて。


「違います」


「んじゃあ、え、なになに。どうしたの」


 いつも通り明るく爽やかな笑みを浮かべた夏希さん。

 私の感情をぶつけても、変わらず笑ってくれますように。


「私、夏希さんのことが好きです」


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