第2話 常識的に2/4

 美里姉さんの威圧感に負けた私は、夏希さんとの出会いから今に至るまで、全部ゲロった。


 この人に隠し事するなんて無理。

 小さい頃から私の嘘を全部見抜いてきた人だもん。


 ただ、芽生え始めている好意については話さなかった。

 せめてもの抵抗です。


 私の話を無言で聞き終えた彼女は、

「あんたそれ、売春じゃないの」

 射抜かんばかりに鋭い視線でそう言った。


 そうですよね、傍から見たら。


 でも、

「違うよ。カラダの関係はないもん」

 ホテルに行くわけじゃない。ただ、お茶をするだけ。

「でもお金もらってるんでしょ? 変わらないでしょ」


「そう言われてしまうと……」

 返す言葉がございません。


「あのねえ、今はご飯食べてるだけかもしれないけど、もし『抱かせて』って言われたらどうすんのよ。他の人とは寝てるんでしょ」


 しまった。喋り過ぎた。

 夏希さんが他の女の人を買って、抱いていることは話さなくて良かったじゃん。

 なんで喋っちゃったんだよ。


 馬鹿。


「だっ、大丈夫。断るから」


「ふーん」


「……」


 痛い。視線が痛い。

 心まで見透かされてるような気がする。


 夏希さんに隠している本心を。


 いやいやいや、流石に気のせいでしょ。気にしすぎ。美里姉さんは仙人じゃないんだから、わかるはずがない。


「でもあんた、夏希さん? だっけ。その人のこと好きでしょ」


「げっ」


 オーマイガー、私の従姉は仙人でした。

 なんでもお見通し。流石。


 なんて関心してる場合じゃない。


 頭皮から変な汗が出てくるのを無視して、美里姉さんから視線を逸らす。


「……」


「まだ私に隠し事するつもり?」


 視線だけじゃなくて、言葉にも鋭さが宿っているような気がする。


「き・り?」


「はいごめんなさい全部喋ります」



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