第2話 常識的に1/4

「ん、やっぱり美里みさと姉さんが作るご飯は美味しいね」


「それは良かった」


 従姉いとこの美里姉さんは私のアパートから徒歩数分に住んでいるから、頻繁にお邪魔させてもらっている。


 実家に帰るよりも高い頻度で。


 今日作ってくれたのは、

「相変わらずオムライス好きだね」

 苦笑しながら言われた。


 仕方ないじゃん。


「世界で一番好きなんだもん」


「それは、パンケーキよりも?」


「へ?」


 なんでここでパンケーキが出てくるの?

 美里姉さんと一緒にパンケーキを食べに行ったことも、甘ったるいあの食べ物を好きだと話したこともないのに。


「この間、たまたま駅前のカフェの前を通ったときに見かけたの。年上の人と食べてたでしょ」


「……うん」


 まさか目撃されていたなんて。

 事実だから否定できなくて、口の中の玉子を飲み込みながら頷いた。


「別の日にもさ、その人と会ってたよね。駅前で」


「……うん」


 迂闊うかつだった。


 待ち合わせ場所として2回に1回は駅前を選んでしまう。

 私は別にどこでもいいんだけど、夏希さんは駅前で待ち合わせするのが「ロマンティックでいいでしょ」って言うから。


 でも、別にやましいことはしてない。寝てないし。大丈夫、落ち着いて言葉を選べば――

「で、どういう関係?」

 おーん。ダメでした。

 笑ってるけど、目が笑ってない。滅茶苦茶怪しまれてる。


「だっ、大学の友だちだよ」


 落ち着け、落ち着け、落ち着け。


「へぇ……」


 これは大丈夫かな。切り抜けられたかな。


 ほっと胸をなでおろしかけた私に、

「季里は大学のお友だちとご飯食べるとき、お金貰うんだねえ」

 美里姉さんは机の上で手を組んで言った。


 あっ、やっぱりダメだった。

 金銭を受け取る場面を見られてたなら、もう完全アウト。


「さあ、正直に話しなさい」


 高校の教師をしている彼女は、まるで生徒を問い詰めるかのように私を追い込む。


 視線をそっとそらした。


「季里」


 逃げ道なし。バッターアウト。


「き・り?」


 ごめんなさい、正直に話します。


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