第6話 初めて先生に電話する

 学校外でも柏木先生とエロ話をしたい。そう思った俺は、彼女に連絡先の交換を申し出る。すると先生は「“友達”としてなら良い」と言ってくれた。


善は急げだ。早速今日の夜に電話してみよう。



 夕食後、俺は携帯を見つめている。電話するのは良いが、一体何時にかければ良いんだ? 先生は忙しいだろうし、早めの時間は厳しいよな…。


かといって遅すぎると、それはそれで失礼だし…。〇INEで連絡すれば時間を気にせずできるけど、入力の手間があるので会話のテンポが遅れてしまう。


何時がベストなんだ? 交換する時に訊いておけばよかったぜ…。



 悩みに悩んだ結果、20時30分頃にかけることにした。20時台は早くもなく、遅くもないよな。程良い時間と俺は判断したけど、先生はどう思うだろうか…?


…気付けば、かけたい時間だ。勇気を出して電話してみる。



 ……なかなか出ない。やっぱり忙しいのかな?

そう思って切ろうとした時、先生の声が聞こえた。


「もしもし、坂口君? 出るのが遅れてゴメンね」


「気にしないで下さい。先生はお忙しいでしょうし」


「こら。学校の外で話す時は“先生”って呼んじゃダメって言ったでしょ?」


「すみません。じゃあ、何て呼べば…?」


「『柏木さん』でも『奈々ちゃん』でも何でも良いから」

年上にちゃん付けはないな。そうなると…。


「わかりました。『柏木さん』と呼ばせてもらいます」


「わかったわ」


候補として奈々ちゃんを挙げたってことは、誰かにそう呼ばれたことがあるのか…?



 「ねぇ、坂口君。私が電話に出るのに遅れた理由わかる?」


「わかる訳ないでしょう」

せめてヒント出してくれよ!


「実はね…。お風呂に入っていたの」


「え?」


「一通り体の水気をとってドライヤーをかけようと思った時に、坂口君の電話が来たのよ。すぐ向かったつもりだけど、この格好だから…」


「“この格好”って何ですか?」


「今の私は、バスタオル1枚ってことよ」


「えぇ!?」

先生のバスタオル姿を想像してみる。…エロい、エロ過ぎる。


「私のバスタオル姿、想像しちゃった?」

からかうように訊いてくる柏木先生。


「…そうですね。しちゃいました」


「正直で結構。私のバスタオル姿なんて、誰も喜ばないでしょうけど…」


「そんなことないです。俺はめっちゃ嬉しいですよ!」

謙遜する必要ないのに…。


「高校生なのに、お世辞が上手ね」


「お世辞じゃないです。水着姿だって観たいぐらいですから!」


「もう。坂口君、調子に乗り過ぎ」


「すみません…」


学校の外なのか、“友達”としてなのかは不明だけど、先生はくだけて話してくれる。

俺は断然こっちのほうが好みだな。



 「…くしゅん」

電話の向こうの柏木先生が、くしゃみをし始めた。


「バスタオル姿なのに、電話を取らせてしまいすみません」


「良いのよ。けど、明日からはタイミングをずらしてくれるとありがたいわね」


「もちろんそうします」

俺のせいで風邪をひいたとなったら、大問題だからな。


「坂口君も体調管理に気を付けるのよ。若いとはいえ、油断大敵なんだから」


「忠告、ありがとうございます」


俺だって高2なんだから、それぐらいはわかるけど…。

ここは大人しく聴いておこうか。


「それじゃ切るわね。また明日、学校で会いましょう」


「はい!」

先生が電話を切ったので、俺も切ることにする。



 良かった。タイミングをずらせば、またかけても良いんだ…。

その事実が、俺のテンションを上げる。明日は何を話そうかな?


ネタ切れにならないよう、早い内に考えておくか。

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