第3話 初めての、職員室で話すエロ話

 クラス担任兼現代文担当の柏木先生の授業中にエロ話をした俺は、職員室に呼びだされた。


先生は怒っていなかったものの、クラスメートの女子を不快にさせたことを理由に俺の両親に報告することを検討する。


それだけは勘弁してほしいと伝えたところ『これから放課後に俺のエロ話を聴かせてくれたら、報告はチャラにする』と言ってくれた。


本当に、俺のエロ話で満足してもらえるのか…?



 翌日。いつも通りに登校し、席に着く俺。


…女子の俺を観る目が冷たい。悪いことをしたのはわかっているが、昨日のことだし1回きりだから、水に流してほしいぞ。


それから10数分後。朝のホームルームの時間になり、柏木先生が入ってくる。いつも通り凛とした感じだ。どう見ても、エロとは縁がなさそうな人なのに…。


先生は連絡事項を伝え、教壇から離れようとしたところ…。


「先生、お聞きしたいことがあるんですが」

学級委員長の長谷川さんが呼び止める。


「何かしら?」


「昨日、先生は坂口君に『ペナルティを課す』とおっしゃっていましたが、彼にどういうペナルティを課したんですか?」


あれは俺を職員室に呼ぶ方便だから、実際は何も課されていない…。

先生はどう説明するんだろう?


「それ、気になることなの?」


「もちろんです。彼がいつ下品で嫌らしい話をするかわかりませんから」


長谷川さん、ひどい言い様だな。今の俺に、そんなことを言う資格はないけど…。


「ペナルティの内容は個人情報に入るから言えないけど、安心して。彼には厳しく言っておいたから。2度とあんな話をすることはないわ。…そうよね?」


先生が俺を観るので、多くのクラスメートの視線が俺に集まる。


「はい、調子に乗り過ぎました。…みんな、ゴメン」


「…ということよ。みんな、彼を許してあげてね」

そう告げた後、先生は教室を出て行った。


先生がここまで言ってくれるんだ。時間はかかるかもしれないが、何とかなるだろう。しばらくは、クラスメートの癇に障ることはしないべきだな…。



 そして放課後になった。今日から職員室にいる柏木先生に俺のエロ話をすることになっている。あの話が本気であれ嘘であれ、顔は出したほうが良いな。


俺は帰りのホームルーム後に教室を出た先生より少し遅めに教室を出て、職員室に向かう。



 昨日同様、ノックをしてから職員室に入る俺。……柏木先生以外の先生は誰もいないな。それを確認した後、先生のデスクの元に向かう。


「そういえば、昨日のエロ話を詳しく聴いてなかったわ」

椅子に座っている先生は、俺を見上げる形で言う。


「昨日の…ですか?」


「そう。『胸は大きさより形が重要だ!』ってやつよ」


「ああ…」

まさか覚えているとは…。興味があるのは本当のようだ。


「形は女の子にとって悩ましい問題だけど、男子が大きさより優先するのは驚いたわ」


「そうですか?」

俺からすれば、普通のことだと思うが…。


「いくら形が良くても、でしょ?」

先生はそう言って、俺の股間を指差す。


思わず、先生の胸で挟まれるシーンを想像してしまう…。


「私は昨日言った通り男の人と付き合ったことないけど、高校の時にクラスメートがよく話してたのよ。『彼氏がおっぱい好きすぎて困る~☆』てね」


情報量が多くて、訊きたいことが色々あるが…。


「そのクラスメートは、先生の友達なんですか?」


「違うわよ。ほとんど話したことないクラスメートの会話を勝手に聞いただけ」


先生の友達は、なのかと思ったぞ。


「そういう話、女子校ではよくあるんですか?」


の基準がわからないけど、坂口君の予想より多いと思うわ。君達男子も、体育の時は好きな女の子について色々話してるんじゃない?」


体育は男女別だから、女子に聴かれたくないことを遠慮なく言っているな。

過激なエロ話をする男子は、決して珍しくない。


「はい、エロいことも結構話してます」


「やっぱりね。男子も女の子も、そんなに変わらないものよ」


そう考えると、エロいことは男女共に興味あるんだな…。



 ……他の先生達が、職員室に集まってきた。そろそろ出たほうが良いな。


「坂口君」

柏木先生が俺を観る。…言いたいことはおおむね予想できる。


「はい、今日は帰ります」


「また明日、話しましょうね」


俺は挨拶をしっかり済ませてから、職員室を出た。

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