第2話 エロ話に興味津々の柏木先生
クラス担任兼現代文担当の柏木先生の授業中、俺は大あくびしてしまう。
その後、先生は「他にも眠そうな子がいるし、つまらない私の話に代わって面白い話をしてくれる?」と俺に言ってきた。
俺が話したいのはエロ話なので堂々とした結果、先生を怒らせてしまい、放課後に職員室に来るように言われた。
何が何でも、両親に伝わるのは避けなければ!
6限と帰りのホームルームが終わった。さぁ、職員室に向かうか。
だが、今向かうと柏木先生と同じタイミングで向かうことになってしまう。
俺が行くタイミングを遅らせれば良いな。
職員室の扉をノックした後、中に入る俺。
小学・中学はあるが、高校で入ったことはないぞ…。
必死にキョロキョロした結果、柏木先生の座っている姿を見かけたので急いで向かう。どうやらここが、柏木先生のデスクのようだ。
近くに他の先生はいないし、ゆっくり話せるな。
「坂口君。女の子の前で、ああいう話は良くないわよ」
「そうですよね…。調子に乗り過ぎました」
もっとライトなエロ話にするべきだったぜ…。
「けど…。私はあなたの話に興味あるの」
「え? そうなんですか? だってあの時、厳しい顔してましたよね?」
「職員室に来なさい!」と言った時の顔、めちゃ怖かったぞ。
「他の女の子の前で、興味津々な顔は見せられないわよ。大人には面子があるから」
「それはわかりますが…。先生は俺より色々経験が豊富でしょ? 俺のエロ話なんてつまらないのでは?」
童貞がいくらエロ話をしたところで、経験済みを楽しませるのは無理だろ。
「私、中高一貫の女子校出身なのよ。だから男の人が苦手でね。今まで誰とも付き合ったことがないの」
「男が苦手? でも、俺と普通に話してますよね?」
態度・表情に弱々しいところはないし、俺の目を観て話している。
そんな人が『男の人が苦手』と言っても、説得力がないぞ。
「君は年下だから何とか頑張ってるだけ。さっき言ったでしょ? 大人には面子があるって」
苦手なことを悟らせないなんて…。先生、凄いぜ。
「そういう環境だったから、異性のエロ話を聴く機会がなかったの」
「異性の?」
ということは…?
「同性ならあるわよ。結構どぎついのもあるけど、聴いてみたい…?」
聴いたら、女子の印象が変わる可能性があるかも…?
聴きたいような、聴きたくないような…。
「いえ、結構です」
少々迷ったが、真実を知るのが怖いから止めておこう。
「それが賢明よ」
クスッと笑う先生。
そういえば、柏木先生が俺を職員室に呼びだす時『ペナルティを課す』と言っていたな。それがどういう内容なのか、訊いておかないと。
「先生。さっき言ってたペナルティのことなんですが…」
「あれは坂口君を職員室に呼ぶための方便よ。だから気にしないで頂戴」
「はい、ありがとうございます」
良かった…。一安心だぜ。
「ただし、次やったら本当に課すからね。覚悟するように」
「わかりました…」
クラス内でエロ話は禁句だな。肝に銘じよう。
ペナルティを課さないなら、両親に報告することはないのか…?
ここは重要だし、白黒ハッキリさせないと!
「柏木先生。今回の件、両親に報告するのは勘弁して下さい。何でもするので!」
「坂口君。誰であっても『何でもする』なんて気軽に言っちゃダメよ。世の中、良い大人ばかりじゃないんだから」
確かにそうかも。先生は社会人であると同時に、人生の先輩だ。
俺の知らないことを、たくさん知っているんだろうな。
「…こうして坂口君と話すのは何かの縁かもしれないわね」
この件以外で先生と話した記憶は……ないな。
経緯はひどいが、多少の縁はあるかもしれない。
「…そうだわ。これから放課後にあなたのエロ話を聴かせてちょうだい。それでご両親への報告はチャラにしてあげる」
「本当ですか…?」
そんな簡単なことで良いなんて…。
「ええ。あなたはエロ話で、クラスの女の子ほぼ全員を不快にさせたのよ。本来は、ご両親に伝えても良いレベルの失態なんだからね」
「それは…わかっているつもりです」
先生じゃなかったら、問答無用で両親に報告しているだろう…。
「君は話したいエロ話を話せる。私は異性ならではのエロ話を知ることができるし、男の人を克服するトレーニングにもなる。一石三鳥よね」
俺が先生のトレーニング相手? 力不足なのは、目に見えている。
「坂口君、緊張しなくて良いのよ。今みたいに話してくれれば問題ないわ」
「そうなんですか…? それなら、何とかなりそうです」
先生が与えてくれた機会だ。いろいろ有効活用したいな。
「今日はもう帰りなさい。長居すると、怪しまれるから」
柏木先生が俺に帰宅を促す。
他の先生がチラホラ職員室に戻って来てるからだ。ここは素直に従おう。
「はい。そうします」
疲れたし、さっさと家に帰ろう。
俺は職員室の出入り口で「失礼します」と挨拶してから部屋を出る。
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