第57話 お祝い
『ふるーつぽんち☆』の単独ライブ、そして俺と天野が恋人になってから早1週間。
それはもう順風満帆な生活を過ごしていた。
学校生活ではこれまでと何ら変わりなく、俺と天野、仁と笑麻の4人で行動している。
ちなみに、仁と笑麻には俺達が付き合っていることを言っていない。
俺としては報告したいのだが、友人とはいえ2人は部外者だ。もしものことがあっては困る。
口を滑らしてからでは遅いからな。
天野も、あのライブからアイドル活動がいつもより忙しくなり、この一週間は学校が終わればすぐに仕事。学校へも、朝、仕事から直行で来ることも多々あった。
影響力が凄かったらしい。
武道館を満員にし、外にも溢れる人。業界人の数々にライブを評価され、ふるーつぽんちは更に有名になった。
国民的アイドルから世界的アイドルに、なんてニュースにも取り上げられていた。
そんな忙しい天野とプライベートで会うのは、ライブが終わってから今日が初めて。
俺が今いるのは、相変わらず天野の自宅であった。
「いちご~、ポップコーン取ってぇ~」
「いいよぉ~」
夜の9時。部屋の電気を消し、2人肩を寄せ合いながら映画を見ている俺達。
これが理想のカップル像だよな。
そうえば、天野の呼び方がいちごへと変わった。理由は簡単で、天野が付き合ったからには苗字だとよそよそしいと頬を膨らませたから。
「いやぁ~、面白かったね~この映画」
「だよなー、SF映画ってあんま見なかったけど、面白いものなんだな」
「私がおすすめしただけあったでしょ」
「まぁな」
今日はいちごがオフということで、好きなことしようと提案したらお家デートで映画鑑賞。
最高のシチュエーションだ。
「あ、そうえばさ――いい報告があるんだよね~」
テレビの電源を消すと、いちごは乙女座りのまま言う。
「ん、なんだ気になるな」
俺もいちごに向き合い、まじまじとした顔で聞く。
「実はですねえ……ふるーつぽんちが海外でライブをする事になりました‼」
と、どこからか出したクラッカーを鳴らすと、満面の笑みで俺に抱きついてくる。
「お、おめでと! それすごくね⁉」
「凄いんだってぇ~! なんかアメリカ人のすごい人がライブ見に来てて、その人からオファーが来たらしいんだよ~!」
「マジであのライブ凄かったんだな」
ふるーつぽんちが海外デビュー。
海外でも日本よりは知名度はないが、人気があるとは聞いていたけど、まさかライブをするくらい人気になるとは。
ていうかその前にアメリカ人のお偉いさんの目に留まることがまず凄い事だ。
「こりゃ~お祝いしないとな」
褒めてと言わんばかりに頭を向けてくるいちごの頭を優しく撫でる俺。
お祝いと言っても、何をしたらいいのか。
ケーキでも買ってお祝いするくらいしか思いつかない。
まぁ、忙しい中で2人で過ごせることが幸せなんだ。2人でワイワイケーキを食べてたらある意味お祝いなのかもしれないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます