第47話 ここでしない……?

「この話の続きはさ――」


 と、天野は足を止める。


「ここでしない……?」


 指差す方向にあるのは、夜道でも目立って光るラブホの看板。


「お前……もしや最初からラブホ行きたかったから車降りただろ」


 ジトっとした目を、撫で声で俺の服の袖を掴む天野に向ける。

 呆れ顔の俺に、


「あ、バレた?」


 テヘッとお茶目に舌を出す天野。

 おい、せっかくいい話をしようとしてたのに台無しじゃねーか。

 いやまぁ、車を降りるとか言い出した時点で怪しいとは思っていたけども、まさかラブホに行きたかったからだとは……


 てか、疲れた体で行くものじゃないだろラブホは。もっと万全な状態で行くのが普通なんじゃないのか?


「なんでよりによって今日なんだよ。別日でもよかっただろ」


「雰囲気だよ~。ライブ終わりに家でしてもムードがないじゃん?」


「いつもムードも欠片もないだろ別に」


「あとは、普通に私がラブホ行ってみたかったから?」


「そうですか……」


 この堕アイドル……疲れよりも性欲を取るか。

 まぁ、どうせ家に帰ってもしただろうし、ラブホの方がムードも出て盛り上がりそうなのは分かる。

 帰り道に寄るのも、定番の流れでそそられるけど……ライブ終わりにするものではない。


「ダメ……かな?」


「もちろん行く」


 甘い声で誘惑してくる天野に即答する俺。

 誘われたら行くしかない。むしろ行かない方がおかしい。


「そうこなくっちゃ!」


「おいおいそんな急がなくても――」


 パァっとした笑顔になった天野は、俺の手を引っ張りすぐさまラブホの自動ドアをくぐる。


「部屋は……可愛い感じのがいいからここにして――早く鍵貰って部屋入ろ!」


「やけに手際がいいなお前」


「ラブホ、行ってみたかったからネットで色々調べといたんだぁ~。おどおどするよりいいでしょ?」


「抜かりないな」


 事前準備を怠らない……やっぱりプロ意識が高いな天野は。


「ほらほら! 急いで!」


「はいよ」


 エレベーターに乗り込み、俺達の選んだ部屋がある3階に移動する。


「やっぱりいいよねぇ~、ラブホって」


「雰囲気とかがか?」


 部屋の鍵を開けて、靴を脱ぎながら言う天野。

 広々とした室内に、いいムードを醸し出す間接照明。キレイに整頓されているダブルベッド。


 見ただけで30分後の光景が目に浮かぶ。


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