第40話 衣装デザイナー

「そうゆう瑞稀くんは青木ちゃんとどこで出会ったのよ~」


 ういうい~と俺の肩をつつく恵那さん。

 ここで天野関係でとは口が裂けても言えない。だったらその場しのぎでウソを吐くしかない。


「仕事の現場で会いましたね。俺の上司? 的な人が青木さんだったんですよ」


 平然とした顔でウソを吐く俺。

 それにしても上出来な作り話だ。普通にあり得そうな話。隣にいる青木さんも目を見開いてこっちを見ている。


「へぇ~青木ちゃんが上司ね~。ちゃんと仕事してるんだね~」


「これでも顔は広いのよ? 美紅ちゃんだって仕事ちゃんとしてるわけ?」


 と、青木さんはジト目で恵那さんを見ながらコーヒーを飲む。


「仕事してなきゃここに入れないでしょ~。ⅤIP席(私たちの憩いの場に)さ」


「……ここに居れるのは私のおかげな事忘れないでよね?」


「……知ってます」


「ちなみに、恵那さんはどんな仕事してるんですか?」


 仲良く話す2人に割り込むような形で、俺は小さく手を上げる。


「あ、私の仕事?」


 自分の事を指差すと、ハッとした表情になる。


「私はね~、ふるーつぽんち専属の衣装デザイナーしてるんだよ~凄いでしょ」


「デザイナー⁉」


「その反応、意外だなーとか思ったでしょ」


 ムスッとする恵那さんに、


「いえ……いやそれもあるんですけど、ふるーつぽんちの衣装、個人的に好きなので、ビックリしました」


 目の前にいる人が、あのメルヘンで可愛い衣装をデザインしてる人⁉ 天野といい青木さんといい、恵那さんまで。

 最近凄い人と関わってるな俺。


「瑞稀くん衣装の良さ分かる人⁉」


 俺の反応に、恵那さんは興奮気味に聞いてくる。


「はい、今回のは特に良かったですね」


「今回のライブ衣装は気合入れたからね~! 素材も最高級! あとはメンバーそれぞれに合った個性をこれでもかと出してるからそう言ってもらえると嬉しいよ~」


「特に、あま……いちごちゃんの衣装が一際目を惹きました」


「やっぱそうだよね! いちごちゃんはふるーつぽんちの要だから特に力入れてるんだ~! めろんちゃんとかみかんちゃんには申し訳ないんだけど、いちごちゃんは他のメンバーより100倍近く細かく作ってるから、分かってくれる人がここにいたか……感動感動」


 一応謝っておきます。

 その一番丁寧に作ってるいちごちゃんの衣装を数時間前に少し汚してしまいました。

 直接的に汚したのは俺じゃなないけど、ほら、間接的に汚してしまったから。

 心の中で静かに謝罪しておこう。


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