第38話 仕事仲間
「お疲れ様です~」
青木さんはドアを開けると、軽く会釈をしながら室内へと入っていく。
「――こんにちは」
俺も、軽く挨拶をしながら謙虚に青木さんの後を追う。
「やほ~、青木ちゃん仕事早かったね~」
「美紅ちゃんも早いじゃ~ん。ちゃんとセッティングしてきたわけ~?」
「あたりめ~よ!」
室内には、一人だけ。机に脚を乗っけ、椅子をグラグラを揺らしながら駄菓子を食べている女性の姿があった。
「てか、その子誰? お初なんだけど」
ひょいと俺の方に目を向けると、小首を傾げる。
「あ~、紹介するね。この子は川俣瑞稀くん。私の仕事仲間だよ~」
「……どうも」
紹介されると、俺はペコリと頭を下げる。
「へぇ~仕事仲間ね~。青木ちゃん若い子としか仕事しないけど、もしかしてソッチ系の趣味なの?」
「ちょ! 変な事言うな! ほらあんたも自己紹介しなさいよ」
「はいよ~」
赤面した青木さんに怒鳴られた女性は、席を立ち俺の前へと来る。
「私は恵那美玖(えなみく)ね。青木ちゃんとは仕事仲間兼マブダチ。よろしくね~」
「よろしくお願いします」
握手をすると、ニッと八重歯を見せて笑う。
見た感じ、青木さんと同年代くらい。マブダチというくらいなのだからそうだろう。
どちらにしろ、見た目がロリな事には変わりない。
黒のオーバーオールに、青のパーカー。そして緑のキャップ。
服装も、言ってはいけないだろうが小学生っぽい。
「ⅤIP席って、もっと人いないんですか?」
ふと疑問に思い青木さんに聞く。
以前、業界人やメンバーの友人などが招待されるって聞いてたけど、ここにいるのは俺と青木さんと恵那さんだけ。
「あー、それね? メンバーはみんな友達なんていないし、業界人はみんなファンも観察したいから一般席のちょっといい席で見てるんだよ」
「……聞いてた話と全然違う」
「ごめんね~、気を引き締めてもらおうと大袈裟、というかめっちゃ盛って話しちゃった」
「別に話を盛らなくても……」
「緊張感は大事じゃん? この業界はいつでも緊張感を持たなきゃ死ぬからね」
「まぁ、そうでしょうけど……」
「許してちょ」
テヘッとお茶目に舌を出しながら謝る青木さん。
……こっちの方が安心だけど、最初からそう言ってくれたらよかったのに。
変な気合を入れてしまった。
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