第36話 早く――

「会議までの時間何しようか」


 壁に掛けられている時計を見ながら天野は言う。


「うーん、俺はゲームでも全然いいけどな」


「それはダメ、瑞稀くん廃人になるから」


「もう廃人だから救いようないぞ?」


「だったら更生しないとじゃん」


「他にすることがあるなら考えるけど、別にないだろ?」


 とか言っているが、ある。

 俺の頭は逆にその事しかない。

 以前から妄想している、衣装でエッチ。楽屋に天野と2人きりで、ちゃんと鍵も閉められている。


 もうする事と言ったらそれしかない。


「することね~、瑞稀くんしたい事ないの~?」


「特にはないかな~。ゲームで十分」


 嘘である。


「うっそだぁ~、絶対にシたいことあるでしょ」


「なんだその不快な笑みは」


 ニヤニヤとこちらを見てくる天野に、俺は細い目を向ける。


「いやぁ~? 瑞稀くんはゲームよりもっとシたいことがあると思ったんだけどなぁ」


「なに、その誘ってるような言い方」


「別に誘ってるわけじゃないよ~? でもシたいなら瑞稀くんから言ってくれた方が嬉しいかなぁ」


「誘ってないなら谷間をちらつかせながら言うなよ」


 衣装の隙間から胸を揺らし、誘惑してくる。

 こんなの見せられたらスイッチが本格的に入るだろ。てか、やはり天野もしたかったのか。


 じゃなきゃ、こんなにストレートに誘ってこないか。


「ぶっちゃけその衣装のままシたいって言うのが本心だけど、汚れないかが心配だ」


 まだ汚れ一つ付いていない衣装を眺める。

 この衣装をエッチしたときに汚してしまったら、ライブにも影響が出るし、青木さんに指摘されてしまう。匂いも気になるし、メリットは俺が興奮するくらいだ。

 心配そうに言う俺に、


「大丈夫だってぇ~、どうせもう汗は付いてるしバレないよ~」


「いや、汗だけじゃなくてさ」


 愛液とかその他諸々かかるだろ。

 ベッドでスる時、誰かさんのせいでビチャビチャになるからバスタオルを近くに置くくらいだし。


「そんな心配するくらいだったらさ―――」


 天野は椅子から立ち、テーブルに手を付くとプリっとしたお尻を突き出し、


「早く……ヤろ?」


 髪をかき上げながら言ってくる。


「もちろん」


 その表情を見た俺は、衣装の事などどうでも良くなり、天野のくびれのある腰をぐっと掴む。


「衣装とか、この後のライブとかどうなっても知らないからな」


「うん……ライブへの活力は瑞稀から貰うから……いっぱいシよ?」


 色気のある目を向けてくる天野。

 ドアの鍵がちゃんと閉まっている事を確認し、俺はズボンのベルトを緩めた。


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