第35話 ナニ話してたの?

「でも、夕方まで暇なんだろ?」


「ライブ開始が17時からで~、会議が16時からだから~、3時間くらい暇だね」


 いつも間にか開けていたお弁当を頬張りながら言う天野。


「3時間か、案外時間あるな」


「至福の休憩時間だよ~。まぁ萌花ちゃんとかは忙しいらしいけど私はしったこっちゃないし」


「少しくらい手伝ってあげたらどうだ……」


「嫌だよ! 主役がここで疲れて本番で本領発揮できなかったらどうするのよ」


「たしかに、本末転倒のだな」


「でしょー? だから私はここでダラダラと休憩してまーす」


 ルンルンとお弁当を食べる天野。

 ここで無理に手伝ってもいい事はないだろう。

 ライブの為に体を休めて万全に備えた方が得策だ。


「瑞稀くんは待ってる時なにしてたの? 結構長かったでしょ」


「俺はずっとスマホいじってただけだぞ? 特に何も」


「え、午前中ずっとそうだったの?」


「そうだけど、何か問題あったか?」


「え、飽きないの?」


 ドン引きした様子で俺を見てくる天野。


「ほぼゲームしてたから飽きなかったな。いつものことだし」


「うわ、廃人ゲーマーだ」


 うるせーよ。普段からずっとゲームしてる人間なんだから何時間ゲームしても飽きないんだよ。

 ソシャゲに終わりはないしな。


「途中で青木さんが来て話はしたけど、30分くらいですぐどっか行っちゃったし」


「え、萌花ちゃんと何か話したの?」


「あぁ、まぁね」


「何話したの?」


「ただの世間話だな」


「ホントぉ~にぃ~?」


 と、から揚げを口にくわえながら顔を近づけてくる。

 ここで赤裸々に青木さんとの会話を話たら、天野は鬼の形相で青木さんの元へ向かうだろう。


 そして青木さんの胸ぐらを掴み怒鳴り散らす。

 この光景が目の裏にくっきりと浮かんでくる。


「マジだって、他に何か話す事あるとでも思ってんのかお前」


 天野の顔を遠ざけると、からあげを口の中に押し込みながら言う。


「――――っ……わらしらちのころ……なんらきられれ………話してたんじゃないの? てかいきなり押し込むな!」


「すまんすまん、うるさかったもんで」


「うるさっ……いやいいや。ホントに私たちの事を話したんじゃないわけ?」


「ちょっとは話したよ。でも普通に友達だけって話だけだ。突っ込んだ話は一切してない」


「それ、私の目を見て言える?」


「命に誓ってもいい」


「もし嘘だったらアソコ切るから」


「それはやめてくれ。俺だけじゃなくてお前も困るだろ」


「……確かに」


 一息置くと、コクコクと頷く天野。

 真顔で納得するなよ。どんだけ棒が大切なんだよ……もっと俺全体を大切にして欲しいものだ。


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