第33話 ノリと勢い?

「なんか私と旦那と似たようなものを感じるわ~」


 背もたれに持たれかかり背伸びをする。


「似たものですか?」


「ものすごく同じ結末を迎えそう」


「結婚ってことですか?」


「最終的にはそうだね。でも途中経過もおんなじだよこれは」


「といいますと?」


「それは言ったら面白くないじゃん? 私達と同じ物語を行くより、物語は自分達で作り上げた方が面白くない?」


 人差し指を向けると、微笑みながら小首を傾げる。

 天野と付き合うなんて考えられない話だ。こんな凡人と完璧超人が釣り合うわけがないのだ。


 それに、天野にはもっといい人がいるはずだ。今はいなくてもこれから確実に出会う。

 後ろめたい気持ちがあるが、俺は天野と付き合いたい。

 俺よりいい人が現れたとするならば、俺がその人以上になればいいだけの話だ。

「まぁ真面目な話をすると、私とおんなじ過ちは犯して欲しくない。いちごちゃん、

 そしてふるーつぽんちをダメにするのは絶対に許さない」


「はい。それは分かっています」


「いちごちゃんはアイドルとしての素質がありすぎる。だからこそ、アイドルとして生き続けてほしい。いちごちゃん自身もアイドル自体は楽しくやってるし、もっと人気になりたいと思ってるからね。あとは私の意志もあるけどね」


 缶コーヒーをジーっと眺める青木さん。

 天野に迷惑をかけない。そんな事重々承知だ。


 もしも関係がバレたら、俺のせいと言っても過言ではない。

 それに天野の才能を潰すことになるなんて絶対に嫌だ。一番避けたい。


 天野の輝ける場所がなくなるのなら、その前に俺は手を引く。


「だからね~、私はみんなにバレない為にも精一杯サポートするから頼ってくれたまえ」


 席を立ち、ドアの方へ向かうと半身振り返り言う。


「サポートですか」


「もちろん、君たちの関係が公にならないように絶対的に隠すことに全力を注ぐよ」


「それ、どうやってですか……」


「んまぁ~、ノリと勢い?」


「心配しかないんですけど……」


「大丈夫だって~! 一回失敗してるか対策はバッチリ! 私を信じなさい!」


「……天野と相談ですかね」


 相談したところで、天野も青木さんなら大丈夫とOKを出しそうだ。


「あ、私今からリハ見に行って指示とかするけど、ここで待ってる?」


 ドアを開けると、去り際に聞いてくる青木さん。


「そうですね。俺はライブが始まるまでここで待ってます」


「おっけ~、まぁお昼休憩とかその他でいちごちゃんとも私とも会う機会があるし、時間かかるかもだけどくつろいで待っててくれ~」


 ドアの隙間から手を振ると、そのまま会場へと言ってしまう。


「天野との関係性……か」


 と、俺は誰もいなくなった楽屋でポツリと呟くのであった。


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