第32話 好きでしょ

「……え?」


「え? ってなに? 私変な事言った?」


 予想していなかった言葉に、俺はアホな声が出る。


「てっきり俺は会うのやめとろって言われるかと思ってました」


 関係が世の中にバレたら、ふるーつぽんちは炎上、解散。

 だとしたら、会うなと言われるのが話の流れであっただろう。

 ポカンとしながら聞く俺に、


「っぷ………っはは――面白いね瑞稀くん」


 クスクスと笑う青木さん。


「違うんですか?」


「私が会うなって言うとでも思った?」


「この話だったら、会うなって言われると思ってました」


「んなわけないじゃ~ん。だって私、それが原因で解散したんだよ?」


「だからこそ言われるのかなーって」


「いやいや! 禁断恋愛して炎上&解散した私がそんなこと言う権利ないって~」


 アハハと笑いながら俺の肩を叩く。

 あ、そういえば青木さんこうゆう人だった。


 根は真面目なんだろうけど、会うななんて言ってこなそうな人だわ。


「私だって、彼氏いる事マネージャーにバレた時に会うなって止められたけど無視して遊びまくってたし、さらに言えなくない?」


「まぁ、はい」


「それに瑞稀くん、正直いちごちゃんの事好きでしょ?」


「なっ……!」


「あ、図星だね」


 これまた予想外の発言に、かぁっと顔を赤くする俺。


「べ、別に好きってわけじゃぁ……ないです」


「そんな反応されても説得力が皆無なんですけど?」


「……逆に好きにならないとでも思います?」


 言い逃れできそうにないので、素直に認める。

 そうだ、興味がない風にしておきながら俺は天野の事が好きだ。

 どちらかと言うと、一緒に居ることが多くなってから好きになったの方が正しい。


 周囲に振舞っている作った性格ではなく、素の性格を知ってから好きになった。

 お人よし完璧超人ではなく、少しだらしなかったり、甘えてきたり小悪魔にイジってきたり、そんな彼女を好きになったのだ。


「うひょー青春してるねぇぇ! 羨ましいわぁぁ!」


「青木さんは、その彼氏さんとどうなったんですか?」


「私、んなのこの指を見れば分かるでしょう」


 そう言って見せてきた左手の薬指には、指輪がはめられていた。


「結婚したんですね」


「そうだよ~、今でもラブラブさぁ」


「でも、俺と天野は本当に付き合ってないですよ。なにせ、恋愛感情を持ってるのは俺だけだと思いますし」


 天野が俺の事を好きなる訳がない。

 ただ都合のいい関係としか思っていないだろう。最初からそれ目的で始まった関係だし、それ以上も以下もないだろう。

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