第31話 過去の話

「いいんですか?」


「瑞稀くんとは長い付き合いになりそうだから、伝えておいた方がいいし、あとはいちごちゃんと瑞稀くんの関係とかにも繋がるから話しておいて損はないし、聞いてくれるかな?」


「是非知りたいです」


 アイドルグループ『ふぁんしるゆにば♪』詳しくは知らなかったが、聞いたことがある名前であった。


 うろ覚えだが、リリースしたシングル曲が一躍有名にはなったものの、すぐに解散したっていうグループだった気がする。

 小学生だった頃、ニュースで流れていた気もする。


「この記事と写真の通り、私はふぁんしるゆびばのセンター、『みるく』として活動してたんだよ。ふるーつぽんちには到底及ばないけど、それなりに人気はあったのさ」


「はい、なんとなく天野から聞いてます」


「だけど解散しちゃったんだよ、色々あって」


「色々とは……?」


「詳しくは話してあげるから、まずはこの記事を見ておくれ」


 と、画面をスクロールして、記事の内容を全文表示させる。


「センターの『みるくちゃん』に熱愛報道……その他メンバーの素行を激写」


 記事には、男女2人がマンションから出てくる写真や、他のメンバーがスーツの人に腕を組んでいる様子などが載せられていた。


「未成年なのにお酒やらたばこやらをしてるっていうのはただのネットでのでまかせだけど、他のメンバーが枕営業してたっていうのは本当だったよ。あと私の熱愛報道も」


「だからふぁんしるゆにばは解散になったってことですか……?」


「そうだよ……まぁ一番の原因は私なんだけどね」


 どこか寂しげな表情で言う青木さん。


「やっぱり恋愛ばバレたからですか?」



「一番人気のセンターに彼氏がいるなんてね……炎上もするわけさ」


 アイドルが恋愛禁止な理由がこれだ。

 好きな人に彼氏がいたら、気持ちが冷める。アイドルを推せなくなるのとまったく同じだ。


 人気アイドルともなれば、よりその反動も大きくなる。

 熱狂的なファンからネットで叩かれ、幻滅され、ニュースで報道され、ファンが減っていく。


 問題が大きくなればなるほど、解散も逃れられないというわけだ。


「色々露わになってく私たちの裏事情でさ、解散ってわけよ。表向きには方向性の違いとかほざいてるけど、んなの事務所がこれ以上話を大きくしないための綺麗ごとさ」


 多分、青木さんが俺に伝えたい事。

 天野と俺が仲がいい。どれだけ俺と天野が友達と言い張っていても、多分一緒に居るところを見られたら確実に『恋人』と言われるだろう。


 仁と笑麻だって冗談交じりに言ってるんだ。それが赤の他人、たはまた『いちごちゃん』のファンだとしたら青木さんの時より世間の反応は取り返しのつかないほどに大きくなる。


[だからさ、これは私からの助言というか、アドバイスというか単純なお願いなんだけど……」


 青木さんはゆっくりと俺の手を取り、


「いちごちゃんとの関係、絶対にバレないようにしてほしいの」


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