第30話 未来がかかってるからね
「ごめんねぇ~、遅くなっちゃったぁ~」
4時間ほど経過した後、呑気にスマホをいじっていた俺の元へ青木さんが戻って来た。
「打ち合わせが長引いちゃってさぁ。いや~ホント大きいライブの前は色々話すことがあるものでね」
手に資料を抱え、耳には無線。タブレットにはライブの映像を流していた。
「忙しそうですね」
俺はスマホを閉じ、大変そうに持っている資料貰うと、テーブルに置く。
「そりゃ~大変よ。なんせふるーつぽんちの未来がかかってるからね」
「未来?」
小首を傾げる俺に、
「色んな業界人が見に来るんだよ~、それもいつものライブの倍くらい。このライブを大正解させたらふるーつぽんちはもっとも~っと有名になれるちょうちょ~重要なライブなわけ」
「……本当に大変そうですね」
そんな大事なライブだったのか今日は。
天野から特に何も聞いていなかったが、言ったら俺が心配して、見に来なくなるとでも思ったのだろう。
そういう所で天野は妙に慎重だからな。
「天野はどこ行ったんですか?」
一緒にいるはずだった天野の姿がなく、再度椅子に座りながら聞く俺。
「今、ステージ確認しに行ったよー。そのままリハとか色々あるから直前まで戻らないんじゃないかな」
青木さんも俺の対面に座り、スマホで誰かと連絡を取りながら言う。
「なに~? やっぱいちごちゃんの事気になるの~?」
テーブルにスマホを置くと、ニヤニヤとしながらこちらを見てくる。
「まぁ、普段仕事してる天野を見ないので、多少は」
忙しいとは聞くものの、間近でアイドル活動をしてるのを見たことないから気になるは気になる。
加えて、今日はライブだ。テレビのロケとか収録とかとでは話が違う。
「心配しなくてもいちごちゃんは精一杯仕事してるから大丈夫だよー。あー見えてすごいアイドルだからねー」
「青木さんから見ても天野はすごいんですか?」
「あたりまえじゃーん。国民的アイドルだよ? 私がマネージャーしてるのが奇跡なくらいだし」
「元人気アイドルから見てもそうなんですね」
「あれ、私がアイドルしてたって話したっけ」
「いえ、天野から聞きました」
「いちごちゃんと違って、私は落ちこぼれたけどね~」
机にうなだれると、スマホを画面を見せながら言う。
「これは……?」
「私のアイドルやってた時の記事……解散する時のだけどね」
スマホに表示されているのは6年前ほどのニュース記事。アイドルグループ、『ふぁんしるゆにば♪』の解散理由などか書かれていた。
記事を見せた青木さんは、スーッと深呼吸をして、
「ちょっとだけ私の昔話、あとはいちごちゃんとの関係を話そうか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます