第25話 ライブ当日


 天野宅に仁と笑麻が来てから早2週間。

 学校での俺達の関係はいい方向へと動いていた。


 俺達3人は徐々に天野の近くへ居座るようになり、人も近寄らなくなった。その代わりに向けられる目線はものすごく痛いが、3分割しているから問題はない。

 それに、天野は笑麻への対応にも少しづつ慣れてきている。


 俺も笑麻に接し方をなにとなく注意しておいたが、その影響もあるだろう。

 結果として、流れでカラオケに行くこともなったし。順調すぎる学校生活を過ごしていた。

 そして、2週間が経ったという事は……


「もうすぐマネージャーこっち着くって」


「おっけー、俺も準備できたわ」


 ふるーつぽんちの単独ライブ当日の日が来ていた。

 時刻は朝の7時。

 昨日は天野の家に泊まり、天野の明日の準備などを手伝い、明日の気合を入れる為に一回戦交わるとそのままベッドで眠った。


 6時にセットしたアラームで俺は目を覚ますと、幸せそうな顔でぐっすりと眠っている天野を起こし、朝ごはんを食べて今に至る。

 お互い荷支度を終え、あとはマネージャーが迎えにくるのを待っている。


「……今更だが、なんか緊張してきたわ」


 玄関前に待機していると、俺は背筋を震わせながら言う。

 どうも嫌な予感しかしない。マネージャーから質問攻めが止まらない未来が見える。

 電話越しでさえチャラけている人だ。何をされるか本当に分からない。


「瑞稀くんが緊張してどうすんの? 普通は私の方だけど? 緊張するのは」


 そんな俺を、細い目で見てくる天野。


「お前は『ライブ』への緊張だろ? 俺のは違う」


「マネージャーでしょ?」


「そうだ」


「んな心配しなくで大丈夫だって~、電話の感じでいい人とは思ったんでしょ?」


「だけどなー、不安は色々残るだろ」


「まぁね~、あの人ナニするか分からないしね~」


「それが怖いって俺は言ってるんだ」


 巧みな話術で誘導されて色々と聞き出されるかもしれない。俺も誘導されないように気を張るつもりだが……あっけない結果に終わりそう。


「とりま会って話さなきゃ分からないじゃん。てかマネージャーも瑞稀くんのこと気になってるし話せば仲良くなれるんじゃない?」


 と、天野は小首を傾げる。


「どうゆう理論で仲良くなるんだよ」


「だって似た部分あるもん」


「どこが……正反対に思えるんだけど」


「うーんとね、動きが繊細で配慮が出来てる所とか?」


「普通の動きと夜の動きを比べないでくれ」


 エッチと普通の仕事の動きとか全くの別物だろ。配慮が出来ているのは関係するかもしれないが、どっちにしろ比べるモノがおかしい。


 でも、仕事が出来る人はエッチが上手いと耳にする。

 ……ってこんな事考えるのやめよう。要らぬ想像をしそうだ。

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