第24話 ノリについていく


「天野さん、今日はありがとね」


「ホントありがとぉ! また遊ぼうねぇ!」


時は経ち、夜7時過ぎ。

しばらく雑談を楽しんだ後、仁と笑麻は笑顔で手を振りながら玄関の扉を閉めた。


「つ、疲れたぁぁぁぁ」


ドアが閉まり、外から微かに聞こえる足音が完全に消え去ると、天野はドアにもたれかかりながら床に座り込む。


「大丈夫か?」


「大丈夫だけど、結構くるね……」


「俺の気持ちがよく分かるだろ?」


「よく毎日一緒にいられるね……」


「慣れだ慣れ」


話している最中、笑麻に激しく絡まれたから一気に疲れが回ったようだ。

まぁあのノリは疲れるだろう。なにせ、笑麻に抱きつかれたり手を繋がれたり、天野にとってはこの女子からの絡みは初めてだったからな。

疲れても仕方がない。


「嫌だったか? あいつら」


念のため聞いてみる。


天野があの2人を嫌いになってたら、俺が間に入って色々しなければならない。

笑麻と仁には何かしらの口実を付けて天野から距離を取らせて、天野に負担を掛けないようにする。


どちらも平和に過ごせるように配慮が必要だ。

俺の問いに、天野は頬杖を付きながら、


「嫌じゃないけど、まだちょっと慣れが必要かな……あのノリは私には早いかも」


と、ため息を吐く。


「あれについてくのには相当時間掛かるぞ?」


「だよね~……大変そう」


「しかも笑麻はリミッターがない。あのノリが毎回ってことになる」


「ついでにお前、女子とあんな濃い絡みした事ないのに、初手からあれは厳しいよな普通に」


「……笑麻ちゃんも凄いね、人との距離の詰め方が」


「まぁそれがあいつのいい所でもあるんだけどね」


あーゆー性格だからこそ、あいつは友達が多い。

誰とでもすぐに打ち解けられる。それが強みだ。とはいっても、詰め方に難ありだとは思うが……


「でもよかったわ。仲良くできそうなら」


とりあえず一安心だ。笑麻と天野はなんだかんだ仲良くできそうな予感がするし、多分大丈夫だろう。


「私も笑麻ちゃんのノリに慣れるように頑張らないと!」


フンスと意気込む天野。


「ちなみに俺は仁のおかげもあってか1週間程度で順応したぞ?」


「なら! 私も瑞稀くんを使って最短1週間で慣れよう!」


「まずは学校での過ごし方からちょっとづつ変えなきゃな」


「周りの様子を見つつだけど頑張ろうね!」


笑顔でグータッチを向けてくる天野に、


「おう」


俺も口角を少し上げながら返すのであった。

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