第23話 距離の詰め方
「あのウザ絡みしてやつらな~、あいつらのせいで気軽に話せやしない」
「そうなんだよぉ~! 仁くんなんとかしてよぉ~!」
と、すがりつく笑麻であったが、
「俺にどうにかできるわけないだろ。あんな群衆」
「なら瑞稀~」
「絶対無理だ。天野でさえ困ってるのに」
「天野ちゃ~ん」
「私にもあの人数は無理かな~……次から次に来るからね~」
天野にも流石にあの人数はお手上げのようだ。
アイドル活動の時よりは人数は少ないものの、ボディーガードやスタッフのように隔てるものがないからな。
ダイレクトに天野に負担がかかる。
「段々と仲良くしてさ、最終的には俺達が周りにいればいいんじゃないか?」
グラスのお茶を飲みながら言う。
「最初から慣れ慣れしくしてると周りから冷たい目で見られるからね」
「みんな、『俺の天野を~』って俺達を非難するだろうな」
「んね。誰のものでもないのに」
学校のやつらはどう思ったらワンチャン天野とあると思ってるんだ。
頭のネジが吹っ飛んでるんじゃないか? そんなラノベ展開が起きるならこの世の全員が俳優やアイドルと付き合ってるだろうに。
そんな展開が起きるのは100万人に一人でいい。俺はその一人に含まれるがな。
「やっぱ、思った以上に仲良いよなー2人」
「だよねぇ~。これまで隠してたのがよく分かる」
話している俺と天野を、にやけた表情で見てくる仁と笑麻。
「んだよ、文句あるのか?」
「別にー? 俺は瑞稀が幸せならおっけーだぞ」
「私はちょっと不満な所があるかな~」
「なんの不満だよ」
「私より先に天野ちゃんと仲良くしてるのが不満だしムカつく」
「しらねーよ、お前の事情なんか」
「天野ちゃ~ん! これからは瑞稀に負けないくらい仲良くしようねぇ~!」
と、笑麻は天野の胸元に飛び込む。
「え、あ、うん」
「私も幸せものだぁ~。こんな可愛い子と友達になれるなんてぇ」
「……どうも」
いきなり飛びつかれた天野は、少し困った様子でなだめるように笑麻の頭を撫でる。
笑麻、初手からそのスキンシップはよくないぞ?
天野が滅多に見せない表情してないからな。多分、それは友達という人間関係から抱き着かれるというスキンシップをされたことがないからかもしれないが……でもほぼ話したことない相手にされると、あんな顔にもなりたくなる。
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