第22話 仲良くできそう

「やっぱそうなんだぁ~。アイドルって大変だね~」


「大変だよ~。まぁ楽しいけどね~」


「だよね~。私には到底分からない次元だけど」


「アイドルなんて憧れるだけの方が幸せだよ~。なってる私が言うのもなんだけどさ」


「うん~、私は仁に愛されるだけで十分だなぁ」


 仁に抱きつくと、顔をうずくめながら言う。


「……彼氏ねぇ~」


 目の前で抱き合っている2人見て、天野はボソりと呟く。

 やはり、天野もカップルという関係に興味があるのか。

 俺とみたいな不純な関係ではなく、純粋な恋愛関係に。


 いくら恋愛禁止とはいえ、高校生だ。恋の一つもしてみたいお年頃。

 アイドルでキラキラしているとはいえ、オフの時もキラキラした生活もしたいのだろう。


 そこら辺にいるただの女子高生。

 放課後にカフェに行ったり、彼氏とデートしたり、休日はのんびりと過ごしたり。

 どこか寂しそうに、羨ましそうに2人を見る天野から、そんな心の声が聞こえてくる気もした。


「にしても天野さんもいい人だよね~、こんな気難しい瑞稀と仲良くしてさ」


「お前までそれを言うか」


 笑麻の頭を撫でながら、仁は小さく笑う。


「瑞稀くん、優しいし絡みやすいと思うんだけどな~」


「仲良くなったらね? でも最初は感じ悪かったでしょ」


「うーん、変な人だなーとは思ったかも?」


「天野まで言い出すか……」


 俺、こいつらにどんな扱いされてるんだよ。少し悲しくなるわ。


「俺に関しては瑞稀と中学から一緒でよく知ってる仲だからさ、こいつの扱いやら笑麻とも俺を通じて仲良くなったけど、天野さんは最初から一対一だったわけでしょ? たしか、仕事を手伝ったかなんかだっけ?」


「そうそう、瑞稀くん、私が残って作業してる所に来てくれて手伝ってくれたんだよねー」


「こう見えて案外いいやつなんだよなー、お人よしというか、他人に興味ない雰囲気出してるけど、ちゃんと気に掛けてるというか」


「すごく分かるー。瑞稀くん以外に人の事ちゃんと見てるよねー」


「ま、距離の詰め方はおかしいけどね」


「確かに、無言で資料取って作業し始めたのビックリしたもん」


「お前ら、貶してるの? 褒めてるの?」


 クスクスと笑う2人に、俺は細い目を向ける。

 でも、仲良くしていけそうでよかった。今みたいに笑い合いながら会話できているから心配はいらなそうだ。

 俺を話の話題にするのはどうかと思うが。それしか話す話題がないのは知ってるけど、普通に学校の話とかすればいいのに。


「ねぇ、天野ちゃん」


「ん~?」


 仁に顔をうずくてめいた笑麻は、パッと顔を上げると、天野の顔をジーっと眺める。


「これから、学校でも話掛けていいかな? ほら、友達になったわけだしさ」


 恥じらいの顔色をする笑麻に、


「私は大歓迎なんだけど~、ほら、私の囲いがさ」


 と、天野は申し訳なさそうな表情をする。


「あ~、たしかに」


 天野に学校で話掛けるのは至難の業だ。

 なにせ、授業の間にある10分休みやお昼休みなどは確実に、天野の席の周りに自称友達やファンが集まっているからな。


 廊下からも他クラスや他学年の生徒が集まっている。

 そこに突撃するのは相当な勇気がいるし、周囲の視線も痛い。

 多分、それは間近で見ている俺達が一番分かっているだろう。

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