第21話 天野の家には部外者2人
「なんか、異様な光景だねこれ」
「誰のせいでこうなってると思ってるんだ」
2日後、俺だけが行くはずだった天野家に、部外者2人の姿があった。
「なんかすいませんねー天野さん」
「ホント、突然ごめんだよ天野ちゃん」
天野に軽く謝罪をする笑麻と仁。
ファミレスの時、電話の内容を伝えた俺に、仁と笑麻はものすごい食いつきを見せ、「私も一緒に行っていい⁉」「なんだそれ俺も行かせろ!」と永遠と言ってきた。
俺も内容なんて言わなきゃよかったが、変に誤魔化してもしつこく聞かれるだけなので正直に言ったが……それが間違いだったな。
しかも、ここで2人を連れて行かないと更にめんどくさい事になるだろうから、天野に許可をもらって現時点に至るという訳だ。
俺は全員仲がいいから気まずくないのだが、3人は今日がほぼ初絡み。
シーンとした空気が気まずい以外のなにものでもない。
「それでー、なんで2人はここに来たのかな?」
コホンと一度咳ばらいをすると、天野は2人に問う。
「2人が仲良いのは気づいてたんだけどさ、ここまで進展してるとは思ってなかったから気になって」
人差し指をツンツンと合わせながら口を開いたのは笑麻だった。
「気になるもなにも、普通に仲良いだけだよ~。それ以上も以下もないから~」
「でもさ、人気者の天野ちゃんがこんな不愛想な瑞稀と仲良くなるのが意外でさ。ほら、瑞稀仲良くなったらいい人なんだけど、最初は関わりにくいじゃん?」
「おい、余計なこと言うんじゃねー」
「そうかな? 私は無駄に関わってくる人よりも瑞稀くんの方が話やすかったんだけどなー」
「ほぇ~、天野ちゃんもっとキラキラした人と仲良くするタイプだと思ってた」
「そんな事ないよ~。私はどっちかというと静かに過ごしたいタイプだからさ」
天野と笑麻は、女子だからか自然と会話が続いている。
このままだったら、詮索されることもないだろう。
もっと話の話題を変えてガールズトークに持っていってほしいものだ。
「瑞稀もこんな友達を持って私は鼻が高いよ~。まさかの瑞稀がだもんね~」
「うっせーよ、俺がだれと仲良くしようが俺の勝手だろ」
俺だって天野と関係を持っているのにビックりしてるわ。
絶対に関わりのない人種だと思っていたからな。それは俺が一番自覚している。
「あ、友達といえばなんだけどさ」
ハッとした表情で手をパチンと叩く天野。
「どうしたの?」
「瑞稀くんから聞いたんだけどさ……笑麻ちゃん、私と友達になりたいって言ってたのホント?」
顔色を伺うように聞くと、
「ホントホント~! 私ずっと天野ちゃんと仲良くしたかったんだよねぇ~!」
パァ―っとした笑顔で天野の手を取る笑麻。
「えぇ~、やった! 私も笑麻ちゃんのことずっと可愛いなーって思ってて友達になりたかったんだよぉ~!」
「こんな美少女に可愛いって言われるなんて……光栄すぎるっ!」
「笑麻ちゃん可愛いじゃん~。その証拠に彼氏だっているんだしさ」
「仁は運命の人だからね~。でも、天野ちゃんもあんなにモテるんだったら彼氏くらい出来てもおかしくないんじゃない?」
と、小首を傾げる笑麻。
「残念なことにアイドルは恋愛禁止なんだよね~」
アイドルに恋人が出来るのはご法度。これは昔から変わってないようだ。
推しのアイドルに恋人がいるなんてファンが知ったらその人を推す意味がなくなる。
当然のことなんだろうが、高校生で青春が出来ないのは辛い気がする。
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