第19話 タイミング!

「なんか午後から気分が良さそうだけどどうした?」


「んなことないと思うけどどうした?」


「いやいや、仁くん、これは瑞稀はナニか隠してる顔をしてるよ」


 放課後、俺は帰り道に寄ったファミレスで2人に詰められていた。


「何もないっての……この話はもうおしまいだ」


 奢ってあげるから来いって言われたから来たものの、またこの話題だ……甘い話には裏があるとはまさにこの事だな。

 マジで来なきゃよかった。


「奢るんだから話くらい聞かせろよ~」


 メロンソーダを飲みながら寂しそうな目を向けくる仁。


「そうだぞ~、私もお金出すんだからその分しっかりと聞かせてもらおうではないか」


 そこに加勢する笑麻。

 この2人、最初から俺の話を聞くために奢ろうとしてたな……まんまと罠にハメられた。


「なら奢らなくていい、食べた分は自分で払うから」


 財布をテーブルに出す俺に、


「ちょちょちょ! 高い物も奢るから財布しまいなさいな」


 と、仁は慌てて俺の財布を投げてくる。


「お前ら、なんでそこまでして話を聞きたい? 人の話好きすぎだろ」


「大好物だけど何か?」


「性格悪っ」


「友達として色々聞いてアドバイスしてあげようかなーっと」


「うんうん! 私達にお任せあれ!」


 サムズアップをしながらキランとした表情を向けてくる2人。


「バカップルのアドバイスなんてものはあてにならないから聞きたくない」


 言ったとしてもろくにアドバイスしてこないだろこいつら。

 自分達の体験談を語って、あたかもそれが正しいかのように言ってきそうだ。

 本当にやめてほしい。


 多分、こいつらより夜の方は進んでいると思う。

 俺が逆にアドバイスしたいくらいだ。


「んで、天野さんとどうだったのわけさ?」


「っだから俺はなんもしゃべらん―――」


 ジュースの入ったグラスを持つと、刹那、机に置いていた俺のスマホが振動する。

 画面を上に向けていた為、3人の視界に入るはその画面に表示される天野からの着信。


「あ……」


「え、マジ?」


「これは……凄いもの見ちゃったね」


 唖然する俺に、2人は顔を合わせて口元を抑える。

 いくらなんでもタイミング悪すぎだろぉぉぉぉぉ! なんでこんな時にあいつは電話を掛けてくる⁉ しかもお前のことを聞かれそうになっているという時に‼


「……とりま出ていいか」


 スーっと深呼吸をすると、俺はスマホを取り、2人に降参の表情を浮かべる。


「ど、どぞ」


「ごゆっくり~」


 2人も、察した様子で優しい視線を向けてきた。

 そんな2人の視線を背中に浴びながら席を立ち、人がいない所へと移動する。

 そして、天野からの電話に出ると、


『ってめぇぇぇぇぇ! っざけんじゃねぇぇぇぇ!』


 これまでにない絶叫をするのだった。

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