第18話 ……責任取ってよね

「ほら、その証拠にふるーつぽんちのグループLINE」


 と、天野は俺にLINEのトーク画面を見せてくる。


「……連絡事項と集合時間とかしか書かれてない」


 その画面には、アイドルらしい会話はなく、ただ淡々とした文章で事務内容が書かれているだけだった。


「アイドル、ていうか女子なんてそんなもんよ。周りの目を気にして仲良くする、じゃなきゃ人間関係ぶっ壊れて自分が生きにくくなるだけだもの」


「男子と違ってめんどくさいな、女子は」


「ホント、嫌になってくるわ」


 鏡で前髪をいじりながらため息を吐く。

 こんな毎日が戦みたいな生活をしているんだ。そりゃー息抜きも必要だ。

 その息抜きの仕方がエッチなのは、ギャップが凄いが。


「その点、笑麻と友達になるんだったら安心してほしい。あいつは遠慮なんかいらん」


 天野の肩を叩くと、頬に人差し指を当てる。


「というと?」


「あいつは男子として接してもらってもいい。無駄な配慮とか、言葉遣いとかも気を遣わず暴言吐いても構わない」


「ほうほう、それは楽そう」


「周りにいる俺と仁にも気を遣わなくていいしな、ちょっとづつでいいから笑麻と絡んでもいいかもしれないぞ?」


「もちもち! さりげなく話掛けちゃおーっと」


 ルンルンで鏡の前でくるんと回る天野。

 短いスカートがひらりと舞い、チラリと水色の縞パンが見えたことは内緒にしておこう。


「笑麻との話は置いておいて、結局お前はなんで俺をここに呼んだ?」


 本題をすっかり忘れていた。

 あのメッセージの意味はなんだったのか。

 わざわざ学校で2人きりになる場所に呼んでナニをしようというのか。


「んなの一つに決まってるじゃん?」


「おま、ちょ――――」


 そう言うと、おもむろに俺の手を掴み、女子トイレの中に連れ込む。

 一番奥の個室へと行き、勢いよく扉を閉め鍵をかける。


「いきなり何するっ―――⁉」


「さっきさ、私が囲まれてる時、瑞稀くんはあの2人といたでしょ?」


 俺の口を塞いで、顔を近づける天野。


「それ見てさ、羨ましくて、一気に精神的に来たんだよね……私はなんでどうでもいい人たちに仕事でもないのに相手して笑顔ふりまかなきゃいけないんだってさ」


 そこに続けて、


「だから……責任取ってよね」


 耳元でそう囁くと、俺の下半身に手を伸ばし、ジッパーを下ろした。


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