第17話 アイドルの裏側

 俺達の教室がある2階から階段を登り、4階へと移動する。

 4階は日常的に使う教室はなく、実習室だけなのでお昼休みには誰もいなかった。

 微かに下の階から人の声は聞こえるが、この階だけ異世界の様にも思える雰囲気だ。

 廊下を進み、集合場所へと移動する。


「あ、やっと来た」


 トイレ前の踊り場に行くと、床にちょこんとしゃがみながらスマホを見ている天野の姿があった。


「おまたせ」


「ちょっと、私をどれだけ待たせれば気が済むわけ?」


「しゃーない。刺客がいたもんでな」


 あいつらが無駄に絡んで来なかったら俺はもっと早くここに来れたはずだ。

 文句ならあのバカップルに言ってほしい。


「刺客って、笑麻ちゃんと仁くんのことじゃないの?」


 立ち上がり、スカートをはたきながら言う天野に俺は、


「そうだよ大正解」


 と、遠い目をしながら言う。


「あの2人ね~、なんか言ってきそう雰囲気を感じるわ」


「ウザ絡みが凄いぞ」


「バカップルって言われるのも納得がいくよ~、大変だねー瑞稀くん」


「まぁ、多少ウザいが友達だし気になる気持ちも分からなくない」


「友達ねー。私も言ってみたいわー」


「あ、そうそう。笑麻がお前と友達になりたいみたいな事言ってたな」


「えマジ⁉」


 俺の言葉に、天野はキラキラした目を向けてくる。


「マジだ。近づきがたいから話せてないけど、話したいなーってぼやいてた」


「ほぉぉぉ~! 遂に私にも女子友が増えるのかぁ~!」


 まだ確定したわけではないけどな。


 あち、あいつの友達になるにはそれなりに覚悟がいる。

 ウザ絡みされる覚悟と、おまけで仁が付いてくるという事だ。

 2人はハッピーセットだからな。仁と2人で遊ぶ約束してても笑麻が付いてくるくらいだし。


「お前、女子友といえばメンバーのみんなはどうなんだよ。あれ友達じゃないのか?」


 よくよく考えれば、ふるーつぽんちのメンバーは友達だと思う。仲睦まじい様子をよく目にするし。


「あーみかんちゃんとめろんちゃんのこと?」


「うんうん、仲良いんじゃないのか?」


「夢を壊すこと言うかもしれないけど、あれはビジネス仲良し」


「うわ……ホントに夢壊れるなそれ」


「みんなが映像だったりライブだったりで目にするものは大体『仕事』だから仲良くしてるだけで、オフだったら全く連絡取らないよ。楽屋でもほぼ話さないし」


「これがアイドルの裏側か……」


「超ブラックでしょ」


 あんな仲良さそうにしているのに、あれがビジネス仲良し……芸能界怖っ。

 とは言っても、人間関係はそうゆうものか。


 当人同士は仲良くなくても、周りがみんな仲良いと仲良しを演じる。

 男子ではそう言ったことはないが、女子だと日常茶飯事。

 天野に至っては学校でいつも演じている。

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