第15話 ワンチャン
「瑞稀さー、もっとキリッとしたら絶対モテると思うんだけどなー俺」
「急になんだ」
「髪とかセットして、不愛想なところも直したら絶対天野さんも落とせるくらいのスペックあるだろうに」
俺の顔をマジマジと見る仁に、
「俺はモテたいとかそうゆう願望はない。あとなんで天野が話に出てくる」
「そりゃー、お前が天野さんの事見てるからだろー。しかもちょっと仲いいからワンチャン狙ってるのかなーって」
「ねーよ」
そういえば、仁と笑麻には俺と天野の関係を言っていない。この2人が知ってるのは、委員会の仕事を手伝って仲良くなったということくらい。
しかも、顔があったら挨拶するくらいで親しい仲ではないと釘を刺している。
もしこいつらに俺達の関係がバレたらどうなることやら。
絶対に言いふらさないであろうが、質問攻めの雨あられとなりそう。
「なんだー、天野ちゃんと瑞稀ワンチャンないのかー」
なにやら不満そうな顔をしながら言う笑麻。
「ないって言ってるだろ。あと何かあってもお前らには関係ない」
「いやあるって~。瑞稀と天野ちゃんがもっと親しくなったら私達と天野ちゃんも仲良くなるわけじゃん? それ最高じゃない?」
「どこがだ」
「私も天野ちゃんと仲良くしたいけど、近づきがたいというか、囲いが強いから話掛けにくいんだよねー」
「お前、俺を駒として使おうとしてないか?」
「駒じゃないよ~! その時が来たら瑞稀と天野ちゃんが最優先!」
俺が運よく天野と関わるチャンスがあっただけで、普通の人は天野と関わるにはあーやって自分からしつこく話し掛けに行くしかないのか。
笑麻は誰とでもフレンドリーに話すタイプだが、あまり天野と話しているところを見たことがない。
それは笑麻も言った通り、天野の囲いにいる熱狂的なファンのせいだからだろうが。
ハァーっとため息を吐き、チラリと件の天野の方を見る。
すると、人と人との隙間から見える、椅子に座り、対応に追われる天野の姿。
囲まれてる中、俺の視線に気づいた天野は、ニコッと微笑むと小さく手を振ってくる。
営業スマイルと明らかに違う、本当の笑顔を。
刹那、机に置いていたスマホが鳴る。
手に取り、届いたメッセージを見ると、
『お昼休み 4階奥のトイレ前集合!』
と、天野から2件のメッセージが入っていた。
意図が分からず、顔をしかめながら再度天野の方を見ると、ウインクしながらサムズアップをしてくる。
トイレ前って、あいつ、多目的トイレで炎上したあの人の二の舞になるつもりなのか?
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