第14話イチャイチャ友人カップル

「いちごちゃんおはよ~!」「いちごちゃん今日も可愛いね~」「いちごちゃん今日髪巻いてるんだぁ~」


 数日後、教室はいつもと変わらず、朝からクラスメイトが天野へすがりよっていた。

 教室のドアからも、他クラスの生徒が天野を一目見ようと殺到している。

 特に男子、目が下心丸出しだ。

 一方、注目の的である天野本人はというと、


「おはよ~! 今日も学校がんばろぉ~ねぇ~!」


 と、相変わらずの営業スマイルを振りまいていた。

 好きでもない、興味もない人から朝から注目の的にされ、笑顔を作って対応する。

 仕事であったら報酬が出るが、学校ではなにも起きない。

 天野が疲れる理由が再確認できる。

 俺はというと、


「なんだぁ~、また天野さんの事見てるのかよ~」


「別に見てね~よ」


「瑞稀はツンデレなんだからそうゆう事言わないの」


 友人である門口仁(かどぐちじん)と沢谷笑麻(さわたにえま)と一緒にいた。

 仁は中学からの同級生、ハイスペックイケメンとでも言ったら手っ取り早い。

 笑麻は、その仁の彼女。テンションが高く、3人の中のムードメーカーと言ったところであろうか。


「なんで否定するんだよ~、別に恥ずかしいことじゃないだろ?」


「そーだよ、みんな見てるんだから隠さなくても」


「お前らアホか? あいつらが頭おかしいだけだろ」


 朝から寄ってたかって天野に相手にされようと必死になっている。

 俺から見たら滑稽で仕方がない。


「大人気アイドルグループのセンターだもんな~、改めてあの人気は凄まじい」


 前の方の席でわしゃわしゃしている群衆を見ながら仁は言う。


「逆に人気じゃない方が怖いだろ」


「まぁな。恋愛とかどうでもいい人間のお前が見るくらいだしな」


「別に見てない黙れ。あと、俺は彼女がいないじゃなくて作らないだけだ」


「また~、中学から言ってるけどそろそろ欲しくなるんじゃないの~?」


 ニヤニヤした表情で笑麻と肩を組みながら見てくる。


「お前らみたいなイチャイチャカップルになるのだけはごめんだ」


 目を細くしながら言うと、


「カップルはそんなもんだってー、それに仁と私は一心同体みたいな所あるからイチャイチャというよりもう繋がってる?」


「意味分からん」


「恋愛したことない瑞稀には分からないことかー」


「うっせーよ」


 ケタケタと笑う笑麻に、俺は吐き捨てる。

 所詮、高校生の恋愛なんてものは別れて付き合っての繰り返し。一生続くなんてことはそうそうない。


 今、目の前でイチャコラしてるカップルは墓場まで一緒だろうが、これが例外なだけだ。

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