第11話 電話

「さっきチケットのことでマネージャーに伝えておいたから大丈………」


「ん? どうした?」


 天野は言いかけると、スマホの画面を凝視しながら固まる。


「……通知オフにして気付かなかったけど、編集の人が6分まえに今から電話出来るかって……あと、そのお友達とも電話したいって……」


「……マズいな」


 マネージャー、やはりぬかりない。

 それはそうだろう。


 国民的アイドルの友達。それも、これまで友達がいなかったと言っていた人がいきなり連れてくる友達だ。

 用心深くなるのも不思議ではない。


「どうするどうする⁉ 電話しなきゃいけないのは確定だけど、瑞稀くんマネージャーになんて説明すればいいの⁉」


 スマホを片手に慌てふためく天野。


「説明って言われてもな……友達というしかないだろう」


「そうだけど! ほら、どうゆう成り行きで友達になったとか、あの人絶対聞いてくるよ⁉」


「委員会の仕事手伝って、そこから仲良くなったでも言っておけばいいんじゃないか? 別に嘘はついてないし」


「でも瑞稀くんは男だよ⁉ なんか深掘りされそうなんだけど……」


「そこはまぁ……適当に流しておこう」


「じゃぁ、とりあえずマネージャーに電話掛けてみるね」


 テキパキとスマホを操作して耳にあてる。


 天野のマネージャー。どんな人なのだろうか。

 やっぱ、仕事出来るオーラが漂うスーツを着た人なのだろうか。口調も堅そう。

 アイドルのマネージャーなんて、事務作業も出来るボディーガードのようなものだろう。


 あらゆる所からの危険を守る役目も果たしているんだからな。


『あ、もしもし……天野です』


 しばらくすると、マネージャーと電話が繋がる。


『はい、そうです』


『――――。――――――』


『友達、はい。クラスメイトなんですけど……はい』


『―――――。――――』


『男子です……はい。別に彼氏というわけでは……そうですただの友達です……』


『――――。―――』


『今、一緒にいるので変わりましょうか? ……はい、今変わりますね』


 通話をミュートにし、スーッと深呼吸すると、


「瑞稀くん、マネージャーと話して」


「え、いきなり⁉」


「一緒にいるって言ったら、変われってうるさくて……」


「左様ですか……」


 俺もため息を吐くと、天野からスマホを貰う。

 どうしよう、これで超堅物な野太い男の声が聞こえてきたら。


 子犬のような声しか出ないぞ俺……

 天野があんなにかしこまって話しているんだ……相当な人物が出てくるに違いない。

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