第7話 ライブ来る?
「そうえば、来月ふるーつぽんちのライブ来る?」
放課後、天野の仕事がオフということでまた家に行き、一回戦目を終えると、スマホをいじりながら天野は聞いてくる。
「あー、今日ニュースでやってたやつか」
「うんうん。武道館でのワンマンだよ~」
「相変わらずすげー人気だな」
「ちなみにチケットはもう完売しました」
と、ドヤ顔でピースする天野。
「ならなんで俺を誘った」
「瑞稀くんが来るっていうならⅤⅠP席用意してもいいかなーって思ったんだけど」
「なんだその特別枠」
「メンバーは各4人づつくらい招待出来るんだけど、あいにく私は友達がいないものですから枠が空いてるわけですの」
しくしくと泣き真似をする天野に、
「友達をあえて作ってないだけだろお前」
俺はジト目を向ける。
「まあまあ、それはいいからさ~。来る?」
「アイドルとかには全く興味ないけど、ぶっちゃけⅤⅠP席ってのに興味ある」
国民的アイドルが行うライブの特別席。
一般のチケットでさえ販売開始して数秒で売り切れて入手困難なのに、それのⅤⅠP席だ。
どんなものか見てみたい。
「なにそれ~。ふるーつぽんち、ってか私のアイドルしてる姿に興ないわけ~?」
プクりと不満そうに頬を膨らます。
「俺はお前がアイドルしてる姿より、裸の姿の方が見てるからな」
「普通逆なんだよね、それ」
「逆だな。普通」
「でも、その新鮮な姿を見れていい機会なんじゃない?」
「そうか~?」
「あと、改めて私が国民的アイドルってことを知ったら、エッチする時も燃えるんじゃない?」
「……一理あるな」
「でしょ⁉」
前のめりになり、俺の顔に近づく天野。
どれだけ自分が人気だって事を認知されたいんだよ。俺は元々、てか普段からそんな事理解している。
天野と俺は別次元の人間だ。
「私は瑞稀くんにライブ来てほしいんだよね~」
「なんでだ?」
「うーん、単純な承認欲求ってのもそうだし、私が頑張ってる姿を間近で見てもらいたいんだよねー」
「いつも頑張って腰動かしてるじゃんかお前」
「違っ……! そうゆう事じゃないから!“アイドル”として頑張ってる姿だから! 瑞稀くん分かっててそんな事言う! だから友達少ないんじゃないの⁉」
ボっと顔を赤くして、早口になる。
「失礼な、お前より友達多いぞ俺。てかお前、俺以外親しい人いないだろ」
「瑞稀くんは特別枠だよ。友達兼セフレみたいな?」
「それはどっちなんだ?」
「セフレ8割で友達2割?」
「そこまで来たらただの棒だろ俺の存在価値」
「違う違う。ただの棒じゃなくて、私専用で私の好みで、でもちょうどいい関係性の棒だよ」
「なんか嫌だわ……てか普通にヤダ」
何故かドヤ顔でサムズアップする天野に、俺は目を細める。
国民的アイドルの専用棒。響きも最低だ。
友達とかだったら俺も胸が張れるが、体だけの関係となると……誰にも言えない。もし、ただの友達だったとしても言えないけどな。
天野いちごと『友達』なんて、口が裂けても言えない。
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